大手通信会社に13年勤務。~未経験からシドニーの寿司職人になった卒業生の選択~
「海外でもう一度暮らしたい」
「日本人だからこそ伝えられる技術を身につけたい」
そう考えていても、安定した仕事や今の生活を手放し、未経験の分野へ踏み出すのは簡単ではありません。
今回ご紹介するのは、飲食人大学大阪校を2023年12月に卒業した山野井徹さんです。
大手通信会社に13年間勤務した後、旅館のフロント勤務やマルタでの語学留学を経験。料理の仕事は未経験でしたが、飲食人大学で3ヶ月間寿司を学び、卒業後は国内の寿司居酒屋で実務経験を積みました。
現在は、オーストラリア・シドニーの日系居酒屋で、寿司や刺身を中心に幅広い日本食を提供しています。
なぜ、長く勤めた会社を離れ、未経験から寿司職人を目指したのでしょうか。
その背景には、海外での出会いと、「日本の食文化を自分の手で伝えたい」という思いがありました。

■ 大手通信会社で13年。安定した仕事から新しい挑戦へ
山野井さんは、飲食人大学へ入学する以前、大手通信会社で営業職として13年間勤務していました。
その後、旅行が好きだったことから旅館のフロント業務へ転職。接客を通じて、さまざまな地域から訪れる人と関わる仕事を経験します。
さらに、英語を学ぶためにマルタへ渡り、約1年間の語学留学に挑戦しました。
しかし、新型コロナウイルスの影響で帰国。再び旅館で働きながら、これからの人生について考えるようになります。
会社員として長く働き、接客業も経験し、海外での生活にも挑戦した。
その中で、山野井さんの中に残り続けていたのが、
「もう一度、海外で暮らしたい」
という思いでした。
ただ海外へ行くだけではなく、現地で働き、自分の力で生活を築いていく。そのためには、国が変わっても活かせる技術が必要です。
山野井さんは、自分に何ができるのかを考え始めました。

■ 寿司職人を目指したきっかけは、海外の友人とのホームパーティー
マルタでの語学留学を通じて、山野井さんにはさまざまな国の友人ができました。
友人たちとホームパーティーをする中で、日本人として何か日本らしい料理を振る舞いたいと考えるようになります。
そこで思い浮かんだのが、寿司でした。
当時の料理経験は、自宅で簡単な料理を作る程度。魚を捌いた経験も、寿司を握った経験もほとんどありませんでした。
それでも、世界的に知られている寿司であれば、日本の食文化を伝えられる。さらに、将来海外で働く際にも、自分の手で身につけた技術は大きな強みになると考えました。
最初は「友人に寿司を振る舞いたい」という思いから始まった挑戦でした。
しかし、寿司について調べていくうちに、その思いは次第に、
「寿司を仕事にしたい」
という具体的な目標へ変わっていきました。

■ 飲食人大学を選んだ決め手は、実技時間の長さ
寿司を学べる学校を調べる中で、山野井さんが見つけたのが飲食人大学でした。
大阪府内の自宅から通いやすかったことに加え、入学の大きな決め手となったのが、実技時間の長さです。
料理未経験だったからこそ、寿司について知識として学ぶだけではなく、実際に魚を捌き、仕込み、握る時間をできるだけ多く確保したいと考えました。
飲食人大学の寿司マイスター専科は、3ヶ月間で合計420時間の短期集中型カリキュラムです。
約40種類の魚介類を扱い、魚の捌き方、切り付け、握り、シャリ切り、一品料理、コース構成、原価計算、接客まで、寿司店の現場から逆算して学びます。
山野井さんは2023年10月、飲食人大学大阪校へ入学しました。

■ 入学後に感じた、現場を想定した授業の厳しさ
入学して最初に感じたのは、授業の緊張感でした。
特に印象に残っているのが、大阪校の小林先生による厳しい指導です。
飲食店の現場では、ただ丁寧に作業できればよいわけではありません。
営業開始までに仕込みを終えること。周囲の進み具合を見ながら動くこと。正確さを保ちながら、作業の速度を上げること。
山野井さんが特に苦戦したのも、スピードと段取りでした。
自分では丁寧に作業しているつもりでも、周囲と比べると進みが遅い。ひとつの作業に集中しすぎると、次の準備が遅れてしまう。
しかし、それは寿司職人として現場に立つためには、避けて通れない課題でもあります。
厳しい指導を受けながら、作業の順番を考え、周囲を見て動く習慣を身につけていきました。
■ 魚を捌き、寿司を握れるようになった3ヶ月
入学前は、魚を捌くことも寿司を握ることもできなかった山野井さん。
授業では、魚の構造を理解し、包丁の入れ方を学び、何度も反復練習を行いました。
最初は思うように手が動かなくても、毎日魚に触れ続けることで、少しずつ作業の流れや力加減が分かるようになります。
「魚を捌けるようになったことと、寿司を握れるようになったことが、一番成長を感じた部分です」
特に印象に残っているのが、3ヶ月目に行われる提供実習です。
提供実習では、生徒自身がコース内容を考え、仕込みから調理、盛り付け、寿司の提供までを担当します。
実際にお客様を迎え、自分の手元を見られながら寿司を握る。普段の練習とは異なる緊張感の中で、身につけた技術や段取りが試されます。
山野井さんにとって、提供実習は自分の成長を実感すると同時に、寿司職人として働く姿を具体的にイメージできた授業でした。

■ 卒業後すぐに海外へ行かず、国内で実務経験を積んだ理由
飲食人大学を卒業した山野井さんは、すぐに海外へ渡ったわけではありません。
まずは日本国内の寿司居酒屋に正社員として入り、約5ヶ月間勤務しました。
学校で学んだ技術と、実際の飲食店で求められる仕事は、完全に同じではありません。
店舗では、お客様からの注文に合わせ、限られた時間で仕込みや提供を進める必要があります。店ごとにシャリの重さやネタの大きさ、握り方、提供の順番も異なります。
その中で、飲食人大学で学んだ魚の扱い方、握り、シャリ切り、段取りの基礎が、現場で働くための土台になりました。
国内で実務経験を積みながら海外渡航の準備を進め、語学学校へ通うための学生ビザを取得。オーストラリア・シドニーへ渡りました。
■ シドニーの寿司店で感じた、基礎を学ぶ意味
オーストラリア渡航後は、飲食店の寿司部門で刺身や海鮮丼などを担当しました。
その後、現在勤務しているシドニーの日系居酒屋「一丁目」へ移り、寿司や刺身を中心に幅広い日本食を提供しています。
現地で扱う魚は、日本でよく使われる魚だけではありません。
キングフィッシュと呼ばれるヒラマサや、ブルーコッドなど、オーストラリアで流通している魚を捌く機会もあります。
魚の種類や大きさが変わっても、魚の構造や基本的な捌き方を理解していれば対応しやすくなります。
シャリ切り、魚の捌き方、切り付け、握り。
「学校で学んだことは全部役に立っています。基本が身についていたから、現場である程度のことに対応できました」
一方で、3ヶ月間学べば、どの店でも同じように働けるわけではないとも話します。
シャリの重さや握り方、ネタの切り付け、提供の速度は店舗ごとに異なります。
学校で身につけた基礎を軸にしながら、勤務先のやり方に合わせていく。その柔軟な対応力が、実際の現場では必要になります。
■ 目の前で返ってくる、お客様の反応
現在の仕事で山野井さんが特にやりがいを感じているのが、現地のお客様の反応です。
カウンターで寿司を握り、そのまま目の前のお客様へ提供する。
料理を口にした時の表情や反応を、直接見ることができます。
寿司の味だけではなく、魚を切り付ける姿や寿司を握る所作にも興味を持ってもらえる。
海外のお客様が日本食に高い関心を持っていることを、日々の仕事を通じて実感しているそうです。
自分が身につけた技術によって、目の前の人に喜んでもらえる。
それが、寿司職人として働く大きな面白さになっています。
■ 将来は、シドニーで小さな店を開きたい
山野井さんの今後の目標は、シドニーで自分の店を持つことです。
シドニー中心部には日本食レストランが多くありますが、郊外へ行くと、日本食を提供する店が少ない地域もあります。
どの地域で、どのような料理を提供するのか。現地で魚や食材をどのように仕入れるのか。
将来の開業を見据え、現在は寿司の技術だけではなく、現地の食材流通や店舗運営についても経験を積んでいます。
大手通信会社、旅館勤務、マルタ留学、寿司学校、国内店舗、そしてシドニー。
一見すると異なる経験ですが、そのすべてが現在の仕事と、これから目指す店づくりにつながっています。

■ 未経験でも、3ヶ月間集中すれば技術は身につく
最後に山野井さんは、寿司職人を目指すことに迷っている方へ、こう伝えます。
「3ヶ月は短い期間ですが、集中して前向きに取り組めば、技術は身につきます」
もちろん、卒業した時点で寿司職人としての学びが終わるわけではありません。
現場に出れば、店ごとのやり方を覚え、求められる速度や品質に合わせていく必要があります。
それでも、魚を捌く、シャリを切る、寿司を握るという基礎を身につけていることで、現場でのスタート地点は大きく変わります。
13年間勤めた会社を離れ、料理未経験から寿司を学び、現在はシドニーで寿司職人として働く山野井さん。
海外で働くという目標は、特別な経歴や才能を持つ人だけが実現できるものではありません。
必要なのは、目標に向かって技術を身につけ、実際に行動へ移すことです。
飲食人大学では、未経験から寿司職人を目指す方に向けて、オープンキャンパス、握り体験会、オンライン個別相談を実施しています。
海外で働きたい方、手に職をつけたい方、自分の可能性を広げたい方は、まず実際の授業や学校の雰囲気を確かめてみてください。

