和食の修行は、何をどの順番で覚えるのか。持ち場と暮らしの実際
和食の世界に入ろうとして調べ始めると、聞き慣れない言葉が並びます。
追い回し。八寸場。焼き場。煮方。板場。
どれも持ち場の名前で、料理人はここを順番に上がっていくと説明されています。ところが、調べる先によって順番が違います。呼び名そのものが違うこともあります。
「どれが正しいのか」と迷ったまま、話が進まなくなる方は少なくありません。
結論を先にお伝えします。順番も呼び名も、店によって違います。これは誰かが間違えているのではなく、もともと一定ではないのです。
この記事では、厚生労働省が運営する職業情報提供サイト(job tag)の記述をもとに、持ち場の中身を整理します。そのうえで、調べてもなかなか出てこない部分(修行中の暮らしと、修行先にどうやって入るのか)を扱います。
なお「長い修行は必要か」という議論もありますが、それは別の記事の話です。ここでは、是非ではなく仕組みをお伝えします。
結論:順番は決まっているようで、決まっていない
職業情報提供サイトの「日本料理調理人(板前)」には、次のように書かれています。
> 小さな店ではほとんどの作業をひとりでやることもあるが、料亭、旅館等では仕事が分業化されている。呼び名も店によって異なるが、掃除、洗い物、野菜の下処理等下積みの「追い回し」、盛り付けをする「先付け、八寸場」、焼き魚、天ぷら等加熱調理を担当する「焼き場、揚げ場」、煮物、吸い物等だしを使った味付けを担当する「蒸し場、煮方」、刺身を切る「板場」に分かれる。
注目していただきたいのは、「呼び名も店によって異なるが」という一文です。
公的な資料は、はじめから「一定ではない」と断っています。ネット上の記事が食い違っているのは、どこかが間違っているからではなく、現場が実際にばらついているからです。
もうひとつ、見落とされやすい点があります。小さな店では分業していません。ひとりで全部やる店も珍しくありません。持ち場の階段がある世界は、料亭や旅館など、人数のいる現場の話です。
なぜ、そもそも分業しているのか
持ち場の話をする前に、なぜ分けるのかを押さえておきます。
料亭や旅館では、コース仕立ての料理を出します。先付けがあり、椀物があり、造りがあり、焼き物があり、煮物が続きます。これらを、お客様の食べる速さに合わせて、順番に出していきます。
ひとりで全部を作っていては、間に合いません。温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに出す必要があります。だから持ち場を分け、同時に動かします。
分業は効率のためだけではありません。ひとつの持ち場に集中することで、その技術が深くなるという面もあります。焼き場に立ち続けた人は、魚の状態を見ただけで火の入れ方を変えられるようになります。
逆に、小さな店ではひとりが全部を担当します。幅広く覚えられる代わりに、ひとつを突き詰める時間は取りにくくなります。どちらの環境を選ぶかは、何を身につけたいかで変わります。
持ち場ごとに、何をしているのか
先ほどの記述を整理します。
| 持ち場 | 担当する仕事 |
|---|---|
| 追い回し | 掃除、洗い物、野菜の下処理など |
| 先付け、八寸場 | 盛り付け |
| 焼き場、揚げ場 | 焼き魚、天ぷらなどの加熱調理 |
| 蒸し場、煮方 | 煮物、吸い物など、だしを使った味付け |
| 板場 | 刺身を切る |
この表は、あくまでひとつの整理の仕方です。店によっては八寸場が先にあり、別の店では焼き場から入ることもあります。
ここで大事なのは、順番を覚えることではありません。それぞれの持ち場で、何が身につくのかです。
追い回しで身につくもの
掃除と洗い物と下処理。一見すると雑用に見えますが、ここで身につくものがあります。
厨房のどこに何があるか。どの順番で物が動くか。忙しい時間に誰が何をしているか。段取りの感覚は、この時期に体に入ります。
包丁を握らせてもらえない時期をどう過ごすかで、その後の伸び方が変わります。
八寸場で身につくもの
盛り付けは、見た目を整える作業だと思われがちですが、実際には判断の連続です。器を選び、余白を決め、高さを出す。料理が完成する最後の一手を担当します。
季節感の出し方も、ここで覚えます。
焼き場・揚げ場で身につくもの
火を扱う持ち場です。魚の脂の落ち方、衣の色づき方、油の温度の戻り方。五感で判断する場面が一気に増えます。
同時に複数のものを扱うため、時間の管理も求められます。
煮方で身につくもの
だしと味付けを担当します。店の味そのものを預かる持ち場で、多くの現場で重い役割とされています。
同じ材料でも、だしの引き方で仕上がりが変わります。ここまで来ると、個人の判断が料理に直接出ます。
板場で身につくもの
刺身を切る持ち場です。包丁の技術が最も表れる場所で、お客様の目に入ることもあります。
魚の状態を見て、どこをどう切るかを決めます。材料の見極めと、包丁の技術が同時に問われます。
それぞれの持ち場で、つまずきやすいところ
実際に現場で起きやすいことを、持ち場ごとに挙げます。
追い回しで止まってしまう人
いちばん多いのが、ここで辞めてしまう形です。包丁を握れない日が続き、「このままでいいのか」と不安になります。
抜け出す人は、言われた仕事の外側に手を伸ばしています。終わったあとに洗い場で練習する、先輩の手元を見る、仕込みの順番をメモする。やっていることは地味ですが、積み重なると差が出ます。
八寸場で雑になる人
盛り付けは、数をこなすと手が慣れます。慣れた結果、同じ形に収めるだけになってしまうことがあります。
季節の移り変わりに合わせて器や高さを変えられるかどうかで、評価は分かれます。
焼き場で火を怖がる人
火の扱いは、失敗が目に見えます。焦がせば分かりますし、生焼けも分かります。失敗が見えるからこそ、慎重になりすぎる人がいます。
ここは、回数でしか解決しません。任される機会をどれだけ作れるかが鍵になります。
煮方で味がぶれる人
だしは、その日の材料と気温で変わります。同じ手順でも、同じ味にならないことがあります。
毎回同じ味に寄せる作業が、この持ち場の難しさです。記録をつけている人は、ここで伸びます。
修行中の暮らしは、どうなっているのか
ここからは、調べてもなかなか出てこない部分です。
住み込みという働き方
職業情報提供サイトには、こう書かれています。
> 店に住み込んで2~10年程度修業することもある。
2年から10年。幅があるのは、店によって事情が違うからです。すべての店が住み込みというわけではありません。「こともある」という書き方のとおりです。
住み込みの場合、家賃や食費の負担が軽くなる一方、生活と仕事の境目が薄くなります。給料の額面だけでは、条件を比べられません。
労働時間は、産業全体で見ると長め
厚生労働省の毎月勤労統計調査(令和5年分確報)によると、宿泊業・飲食サービス業の一般労働者の総実労働時間は月174.3時間で、全産業の163.5時間より長くなっています。
これは調理の現場だけの数字ではありませんが、営業時間に合わせて動く仕事である以上、時間は長くなりやすいという傾向は読み取れます。
仕込みのために早く入り、締めの作業で遅くなる。その間に休憩が入ります。朝から晩まで拘束されているように見えて、中抜けがある。これが多くの現場の形です。
一日はどう流れるのか
時刻は店によって違いますが、流れには共通の形があります。
まず仕込みです。魚をおろし、野菜を切り、だしを引きます。営業が始まる前に、その日に出す料理の下ごしらえを終えておきます。追い回しの人は、この時間にいちばん動きます。
次に営業です。昼の営業がある店では、ここで一度山が来ます。注文が入るたびに、各持ち場が同時に動きます。
昼が終わると、片付けと休憩です。先ほど触れた中抜けの時間にあたります。休む人もいれば、この時間に包丁の練習をする人もいます。
夕方から夜の営業に向けて、もう一度仕込みをします。夜がいちばん長く、いちばん忙しくなります。
最後に片付けと翌日の準備です。厨房を洗い、道具を手入れし、翌日の仕入れを確認します。
一日のうち、お客様の料理を作っている時間は一部です。残りは、仕込みと片付けと準備です。和食の修行で覚えることの多くは、この見えない時間の中にあります。
小さな店の労働時間には、別の決まりがある
もうひとつ、知られていない決まりがあります。
労働時間は、原則として週40時間までです。ところが労働基準法第40条にもとづく特例があり、常時10人未満の労働者を使用する飲食店などでは、週44時間まで認められています。
和食の店には、少人数で回しているところが多くあります。応募する店がこの特例にあたるかどうかで、所定の労働時間が変わります。求人票の「週所定労働時間」の欄は、見ておいたほうがよい項目です。
賄いと食事
修行中の食事については、賄いが出る店が多くあります。これは給料には表れない部分です。
賄いは、食費が浮くというだけの話ではありません。余った材料をどう使うかを考える練習になります。実際、賄いを任されることが、最初の「料理を作る機会」になる現場もあります。
休みの取り方
定休日のある店もあれば、交代で休む店もあります。土日祝は営業日になることが多く、世間の休みとはかけ離れた生活になります。
ここは、始める前に家族と話しておいたほうがよい部分です。
休みの日数だけでなく、まとまった休みが取れる時期も店によって違います。年末年始やお盆は、料亭や旅館にとって忙しい時期にあたります。帰省や旅行の予定は、時期をずらして組むことになります。
業態によって、修行の中身が違う
和食といっても、現場はひとつではありません。代表的な業態と、そこで身につくものを並べます。
| 業態 | 特徴 | 身につきやすいもの |
|---|---|---|
| 料亭 | コース中心。持ち場が分かれている | 季節の献立、格式のある盛り付け |
| 旅館 | 朝食と夕食に山がある。宿泊客が相手 | 大人数の段取り、地の食材の扱い |
| 割烹 | カウンター越しに調理することが多い | 接客を含めた立ち回り、臨機応変さ |
| 小さな店 | ひとりで全部を担当 | 仕込みから提供までの一通り |
| 寿司店 | 魚の扱いとシャリが中心 | 魚の目利き、包丁、握り |
同じ「和食の修行」という言葉でも、中身はかなり違います。
旅館で3年働いた人と、割烹で3年働いた人では、できることが違います。どちらが上ということではなく、身につく方向が違うのです。
だから、修行先を選ぶときには「どこが有名か」よりも「そこで何を覚えられるか」を見たほうが、あとで効いてきます。
人が足りていない職業だという事実
入り口の話をする前に、数字をひとつ確認しておきます。
職業情報提供サイトの「日本料理調理人(板前)」のページには、令和7年度の有効求人倍率として4.22という数字が載っています。求職者1人に対して、4件を超える求人がある計算です。
同じページには、就業者の平均年齢が44.9歳であることも示されています(令和7年賃金構造基本統計調査を加工した数値)。
この2つから分かるのは、現場が人を求めているということです。若い人が入ってくれば歓迎されますし、30代や40代で入ることも珍しくありません。
「修行先に入れてもらえるだろうか」と心配する方は多いのですが、数字の上では、選ぶ立場にあるのは働く側です。だからこそ、どこに入るかを比べて決める余地があります。
学校から修行先へ、どうやって入るのか
もうひとつ、情報が少ない部分です。
和食の現場に入る経路は、大きく3つあります。
紹介で入る
料理学校や前職のつながり、知人からの紹介で入る形です。双方に事前の情報があるため、入ってからのずれが少ないのが利点です。
一方で、合わなかったときに辞めにくい、という面もあります。
求人を見て入る
一般の求人を通じて応募する形です。選択肢は広がりますが、求人票から現場の様子までは分かりません。
見学をお願いできるかどうか、聞いてみる価値があります。断られることもありますが、受け入れてくれる店もあります。
直接たずねる
気になる店に、直接連絡する形です。昔から行われてきた入り方で、今でもあります。
ただし、忙しい時間を避けるなどの配慮は必要です。
どの経路でも、見られているのは同じ
入り方は違っても、店が見るところは変わりません。続けられそうか、人として一緒に働けそうか、そして今日から何ができるか。
最後の点が、次の章につながります。
修行先を選ぶときに、見ておくこと
入り口の話を続けます。実際に選ぶ段階で、見ておきたい点を挙げます。
人数と持ち場の数
人数が多い店ほど分業が細かくなり、ひとつの持ち場にいる期間が長くなります。少人数の店は、早く幅広く任されます。早く任されたいか、深く覚えたいかで選び方が変わります。
献立が変わる頻度
月替わりの店と、年に数回しか変わらない店があります。変わる回数が多いほど、覚える品数は増えます。
教える文化があるか
「見て覚えろ」の店と、手順を言葉で教える店があります。どちらが良いとは言えませんが、自分がどちらで伸びるかは考えておいたほうがよいでしょう。
見学の際に、先輩が後輩にどう話しているかを見ると、だいたい分かります。
続けている人がいるか
長く働いている人がいる店は、続けられる環境である可能性が高くなります。逆に、入れ替わりが激しい店には理由があります。
これは面接の場で聞いてかまいません。「どのくらいの方が長く働いていらっしゃいますか」という聞き方で十分です。
入る前に、どれだけ技術が要るのか
職業情報提供サイトには、その職業で実際に働いている人が「入職前にどれくらいの訓練が必要だと考えているか」という調査結果が載っています。
| 回答 | 板前 | すし職人 |
|---|---|---|
| 特に必要ない | 32.7% | 46.5% |
| 1ヶ月以下 | 2.0% | 9.3% |
| 10年超 | 2.0% | 9.3% |
| わからない | 34.7% | 18.6% |
「特に必要ない」が、板前で3割、すし職人で半数近く。つまり、技術がなくても入れる職業だと、現場の人自身が考えています。
ここで誤解してほしくないのは、「技術が要らない」と「技術があっても意味がない」は別の話だということです。
技術がなくても入れます。けれども、入ったあとに任される仕事は、できることの量で決まります。すし職人の説明には、こう書かれています。
> 多くの場合、最初の1~2年は見習い仕事で、店内の清掃や食器洗い、雑用、出前などを行い、その後包丁を持つことができ、材料の選び方、仕込みやにぎり方を学び、一人前のすし職人として腕を磨いていく。
最初の1〜2年は、清掃と食器洗いと雑用と出前。ここを短くできるかどうかは、入る時点で何ができるかにかかっています。
修行中に、自分でできること
持ち場が上がる速さは、店の事情だけで決まるわけではありません。本人の動き方でも変わります。現場に入ったあとにできることを、4つ挙げます。
書いて残す
仕込みの分量、火にかけた時間、その日の気温。見て覚えるだけでは、翌週には抜けています。帰ってから書き留める人は、同じ失敗を繰り返しません。
煮方の章で触れたとおり、味を毎回そろえる作業では、記録がそのまま力になります。
聞く時を選ぶ
営業中の厨房で質問はできません。仕込みが落ち着いた時、片付けの時、賄いの時。聞ける時間は限られています。
聞く内容も、「どうすればいいですか」より「こうやってみたのですが、どこが違いますか」のほうが、返ってくる答えが具体的になります。
道具を手入れする
包丁を研ぐ。まな板を洗う。布巾を整える。道具の状態は、周りから見えています。任せてよいかどうかの判断は、こういうところでされています。
休みの日に食べに行く
自分の店の味しか知らないと、比べる基準ができません。他の店で食べると、自分の店が何を大事にしているのかが見えてきます。
どれも特別なことではありません。ただ、続けている人と続けていない人の差は、1年たつとはっきり出ます。
生活との折り合いをどうつけるか
修行を始めるとき、見落とされがちなのが生活の設計です。
土日祝が出勤になります。世間が休む日が、いちばん忙しい日になります。友人との予定も、家族の行事も、合わせにくくなります。
ここを曖昧にしたまま始めると、あとで苦しくなります。はじめに家族と話しておいたほうがよい項目を挙げます。
- 休みが平日になること
- 帰宅時間が遅くなる日があること
- 最初の時期は収入が上がりにくいこと
- 住み込みの場合は、生活の場が変わること
一方で、良い面もあります。平日に休めるので、役所や病院の用事は済ませやすくなります。混んでいない時期に出かけられます。
生活のリズムが変わるだけで、暮らせなくなるわけではありません。知らずに始めるか、知って始めるかの違いです。
鉄板焼きから、寿司の世界へ

福本勝則さんは、鉄板焼きの世界で腕を磨いてきた方です。その後、飲食人大学で寿司の技術を学び、新たな挑戦を始めました。
料理の経験がある方でも、和食や寿司に移るときには覚え直す部分があります。魚の扱い、包丁の入れ方、シャリとの合わせ方。近いようでいて、求められるものが違います。
ただし、火と材料に向き合ってきた時間は無駄になりません。段取りの感覚、仕込みの読み、味の記憶。持ち場の階段を一段ずつ上がり直すのではなく、持っているものを土台にして入り直すという道があります。
修行の仕組みを知ったうえで、どう入るか
ここまで、持ち場の中身と暮らしの実際を見てきました。最後に、入り方の選択肢を整理します。
現場に入ってから覚える道があります。時間はかかりますが、お金をもらいながら学べます。
先に技術を身につけてから入る道もあります。学ぶ期間の費用はかかりますが、入った日から任される仕事が変わります。
飲食人大学の寿司マイスター専科では、実技60日・420時間で、40種類以上の魚を扱います。追い回しの時期に包丁を握れないまま過ぎる時間を、先に済ませておく形です。
どちらが正しいという話ではありません。自分が何歳で、どれだけの時間を使えるのかによって、合う道は変わります。
この点について、修行そのものの是非を掘り下げた記事もあります。【料理人の修業は教えてくれない?】下積み10年が無駄な理由と、最速で本物の技術を手にする「新・常識」、【ミシュラン 料理人】修行10年は嘘?未経験から最短で星付きの技術を手にする「新・常識」、【寿司学校は3ヶ月でなぜプロになれる?】「10年修行」の常識を覆す科学的メソッドと未経験からの成功法則をあわせてご覧ください。
よくある質問
和食の修行では持ち場をどんな順番で上がりますか
一般には、追い回しから始まり、八寸場、焼き場・揚げ場、蒸し場・煮方、板場へと進むと説明されます。ただし職業情報提供サイトも「呼び名も店によって異なる」と記しており、順番も呼び名も一定ではありません。小さな店では分業自体がない場合もあります。
追い回しとはどんな仕事ですか
掃除、洗い物、野菜の下処理などを担当する持ち場です。包丁を握る機会は少ない時期ですが、厨房の動き方や段取りを覚える期間でもあります。
和食の修行で住み込みは今もありますか
あります。職業情報提供サイトには「店に住み込んで2〜10年程度修業することもある」と書かれています。ただしすべての店が住み込みというわけではありません。条件は店ごとに異なるため、応募前に確認してください。
修行中の食事はどうなりますか
賄いが出る店が多くあります。食費の負担が軽くなるだけでなく、材料の使い方を考える練習にもなります。ただし、賄いの有無や内容は店によって違います。
和食の料理人は休みが取れますか
土日祝は営業日になることが多く、世間の休みとはずれた生活になります。定休日がある店も、交代で休む店もあります。宿泊業・飲食サービス業の一般労働者の総実労働時間は月174.3時間で、全産業の163.5時間より長い傾向にあります(毎月勤労統計調査 令和5年分確報)。
修行先はどうやって見つけますか
紹介、求人、直接たずねる、の3つが主な経路です。求人票からは現場の様子が分からないため、可能であれば見学を申し込んでみてください。
未経験でも和食の修行先に入れますか
入れます。職業情報提供サイトの調査では、入職前に必要な訓練期間について「特に必要ない」と答えた人が、板前で32.7%、すし職人で46.5%にのぼります。ただし入ったあとに任される仕事は、できることの量で決まります。
一人前になるまで何年かかりますか
年数を定めた公的な基準はありません。すし職人については「多くの場合、最初の1〜2年は見習い仕事」と説明されています。その後の進み方は、店と本人によって変わります。
和食の修行はどの業態を選ぶとよいですか
料亭、旅館、割烹、小さな店、寿司店で、身につくものが違います。料亭は季節の献立と盛り付け、旅館は大人数の段取り、割烹は接客を含めた立ち回り、小さな店は一通りの流れです。有名さよりも、そこで何を覚えられるかで選んでください。
修行先はどこを見て選べばよいですか
人数と持ち場の数、献立が変わる頻度、教える文化があるか、長く働いている人がいるか。この4つが目安になります。長く働いている方がどのくらいいるかは、面接の場で聞いてかまいません。
料理経験があれば和食の修行は短くなりますか
持っている技術によります。火の扱いや段取りの感覚は活きますが、魚の扱いや包丁の入れ方は覚え直す部分があります。ゼロから始めるのとは違う入り方ができる、という意味では有利です。
何歳からでも和食の修行は始められますか
年齢の制限はありません。職業情報提供サイトでは、すし職人は年齢に関わらず働ける職業だと説明されています。板前の就業者の平均年齢は44.9歳です。ただし、見習いの期間は収入が上がりにくいため、生活の見通しを立ててから始めることをおすすめします。
小さな和食店の労働時間は週40時間ですか
店の規模によります。原則は週40時間ですが、常時10人未満の労働者を使用する飲食店などには、週44時間まで認める特例があります(労働基準法第40条)。求人票の週所定労働時間を確認してください。
修行中に持ち場を早く上がるにはどうすればよいですか
記録をつけること、聞く時を選ぶこと、道具を手入れすること、他の店で食べることが役に立ちます。持ち場が上がる速さは店の事情にも左右されますが、任せてよいかどうかは日々の動き方で判断されています。
修行先の見学では何を見ればよいですか
先輩が後輩にどう話しているか、厨房が片付いているか、道具が手入れされているかを見てください。教える文化があるかどうかは、やり取りの様子に表れます。あわせて、長く働いている方がどのくらいいるかを尋ねると、続けられる環境かどうかの手がかりになります。
まとめ:仕組みを知れば、選び方が変わる
要点を整理します。
- 持ち場の順番も呼び名も、店によって違う(職業情報提供サイトが明記)
- 小さな店では分業自体がない。階段があるのは人数のいる現場
- 住み込みは「2〜10年程度修業することもある」。すべての店ではない
- 宿泊・飲食の労働時間は、全産業より長い傾向(174.3時間 対 163.5時間)
- 板前の有効求人倍率は4.22(令和7年度)。選ぶ立場にあるのは働く側
- 常時10人未満の飲食店などは、週44時間までの特例がある(労働基準法第40条)
- 入る経路は紹介・求人・直接たずねるの3つ
- 入職前の訓練は「特に必要ない」が板前32.7%・すし職人46.5%。ただし任される仕事は、できることの量で決まる
- すし職人は「最初の1〜2年は見習い仕事」と説明されている
修行の仕組みを知ると、見え方が変わります。
「何年かかるか」ではなく、「最初の1〜2年をどう使うか」が問題だと分かるからです。清掃と洗い物で過ぎていく時間を短くする方法は、現場に入る前にもあります。
飲食人大学では、実技60日・420時間で40種類以上の魚を扱います。入る前にできることを増やしておけば、任される仕事が変わり、同じ1年の中身が変わります。
