創業65年老舗自動車部品メーカーの専務から飲食業界へ。菊川直紀さん「挑戦するなら学びが必要だった」

菊川直紀さん(きくがわ・なおき)
家業である自動車部品メーカーで専務取締役を務める傍ら、趣味の釣りをしていた時に起きた事件をきっかけに泉佐野漁港で食堂を開業することを決意した菊川さん。現在は1日1000人が訪れる繁盛店となっている。人生を捧げて作った「もっと多くの人に魚を好きになってほしい」という想いが込められた食堂の開業までのストーリーを追っていきます。
《経歴》
1998年3月〜 大学卒業
1998年4月〜 自動車部品メーカーに就職
2024年1月 飲食人大学(大阪校)寿司マイスター専科で修業
2024年10月 泉州漁港食堂きくのや オープン
紀淡海峡での漂流が運命を変えた
——まずは自己紹介と、飲食業界に挑戦するきっかけを教えてください。
私は創業65年の自動車部品メーカーで専務取締役を務めていました。全くの異業種からの転身です。
大きな転機は、趣味の釣りで船が故障して漂流したときのこと。助けられて辿り着いた泉佐野漁港で目にしたのが、コロナ禍にもかかわらず行列ができる飲食店でした。
逆風の中でも人々を満足させ、喜ばせる飲食業という仕事の尊さに感銘を受け、「自分も漁港で食堂をやろう!」と決意しました。

設計士なし、コンサルなし。支えになったのは「飲食人大学」
——飲食人大学に入学された経緯を教えてください。
異業種からの参入ですから、現場を知らないままではスタッフに示しがつきません。そこで、飲食人大学に入学しました。オーナーシェフでなくても、調理の基礎を持っていることは大きな武器になると感じたからです。
実際、寿司職人の技術を基礎から徹底的に学んだ経験が、開業に直結しました。
我流ではなく「正しい基本」を徹底
——大学での学びはどのように役立ちましたか?
包丁の研ぎ方、魚のさばき方、道具のメンテナンスまで。すべてを“正しいやり方”で叩き込まれました。
そのおかげで、今でも料理長やスタッフに対して正確に指示ができますし、人材採用の基準づくりにも役立っています。経営者であっても職人を理解できるようになったのは、飲食人大学のおかげです。

昼夜問わず人生を捧げた、2年間の準備
——開業に至るまでの道のりは?
開業を予定していた土地を借りるのがかなり難易度が高く、だいぶ苦戦したのですが、土地のオーナーが自分の祖父とのつながりが強く、奇跡的に借りることができたんです。これは運命だと思い、妻には「男に生まれたからには一度勝負させてくれ!」とだけ伝えて開業をすることを決意しました。妻からの返事は聞かずに始めたのでYESでもNOでもなく呆れていたのかもしれません(笑)
もともと仕事で工場設計はしていたので、設計士もコンサルタントも使わず、自分で図面を引き、昼夜問わず人生をかけて準備をして、開業に至りました。
魚好きが集う場所に。願いが叶った3年間
——開業から現在までを振り返っていかがですか?
この3年間は、朝から晩までお店に人生を捧げてきました。そのなかで嬉しいのは、毎日たくさんのお客様に来ていただき、魚の魅力を楽しんでいただけていることです。
もともと「もっと多くの人に魚を好きになってほしい」という思いで始めた食堂ですので、今では1日に1000人を超える方々が魚料理を味わってくださっている現実は、本当にありがたく、感慨深いです。
支えてくださるお客様、そして共に頑張ってくれているスタッフに、心から感謝しています。
現在は料理長も雇い、お店の仕組み化がうまくいき始めたので以前のように死ぬほど働いている状態ではなくなってホッとしているが、逆に寂しさも感じています(笑)

「全く新しい学び」と「自分が持っている経験」が交わる時
——経営視点から感じる飲食人大学の価値とは?
飲食人大学で学べたのは技術だけではありません。お客様に対しての姿勢、心構えなど、日々の授業の中で「当たり前」として叩き込まれる価値観は現在の店舗運営に大きく役立っています。
もともと工場のライン作りなどは得意だったので、大学での学びと自分の経験を組み合わせた効率的なセルフサービス方式の導入、ターゲットに合わせた価格設定やサービスづくり。そうした発想を形にできたのは飲食人大学での学びがあったからこそだと思います。
地域を元気にする「漁港食堂」という仕掛け
——今後の展望を教えてください。
宴会スペースやバーベキューサイトのオープンも控えています。泉佐野という地域を元気にし、地元の魚の魅力を発信する拠点にしたい。
そのために、漁師とのつながりを大切にし、神経締めなど鮮度を保つ技術を駆使して、お客様に最高の魚を届けていきたいと思います。
異業種からでも挑戦できる。次はあなたの番
——最後に、入学を検討している方へメッセージをお願いします。
迷っているなら、すぐに行動すべきです。飲食人大学での学びは一生ものの自己投資であり、経営者にも職人にも大きな武器になります。
私自身、ただの“魚好き”からでも挑戦できました。次に挑戦するのは、この記事を読んでいるあなたです。

写真素材提供:©︎旅する日々の記憶と記録。matka08
