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お客様に愛され続け53年。後継者問題に直面した老舗寿司店「京すし」女将 向井静さんの挑戦と決意とは。

向井 静さん(むかい・しずか)

53年続く老舗寿司店「京すし」の女将を務める向井さんは、お店の後継者問題に悩んだ末に、自ら寿司職人を目指し「飲食人大学」への入学を決意。それまでの経験、学びの成果、そして寿司職人としての未来への意気込みを語っていただきました。

《経歴》
2000年4月〜 昭和46年開業・老舗寿司屋「京すし」にて勤務
2024年6月 飲食人大学(大阪校)寿司マイスター専科で修業

後継者問題に直面した老舗寿司店。

——飲食人大学に入学されるまでの経緯やご経歴を教えてください。

前職は看板屋で、「京すし」の看板やのれんのデザインなどは全て私が作成しました。

この店(京すし)は主人が創業した店で、今年(2024年)で53年目を迎えます。これまで、店を任せようと思っていた職人さんが諸事情で辞めることになったり、病気で亡くなったり、独立したりと、なかなか後継者に恵まれませんでした。子供たちもいますが、全く別の仕事をしていて、後継者問題で長い間悩んでいました。お客さんからも「今後どうするの?」と聞かれることが多くありました。

私は主にホールを切り盛りする女将として働いていましたが、寿司は握れなかったので、業態を変えることも考えました。しかし、せっかくお客さんがついてくれていますし、ここまで頑張ってきたのだから、私自身が寿司の技術を習得したら良いのではないかと思い、飲食人大学に入学しました。

寿司屋なので、店で教えてもらえるのではないかと思われるかもしれません。しかし、営業中や仕込みの時間ではなかなか時間が取れませんし、私自身も用事で忙殺されています。また、職人さんたちの手を止めるわけにもいきません。

そこで「飲食人大学」の情報を調べてみると、3ヶ月で修業ができ、内容がかなり濃いことがわかりました。面接時に先生が「ここは教えることに特化した学校」とおっしゃっていたのですが、入学してみてまさにその通りだと実感しました。

年齢的にあまり時間をかけれず、何年もの修業は厳しいと感じていたので、3ヶ月が精神的にも体力的にもピッタリだと思い、入学を決心しました。

厳しくも充実した日々。寿司技術だけでなく人生の学びも。

——実際に入学してみていかがでしたか。

入学の際、先生に「本当に3ヶ月で握れるようになるんですか?本当に捌けるようになるんですか?」と確認するくらい、最初は半信半疑でした。しかし、実際に握れるようになり、捌けるようになり、仕込みも難なくできるようになりました。

優しい先生やクラスメイトで楽しいこともありましたが、授業は朝から夕方まであり、少し大変でした。しかし、今はカウンターで即戦力として立てているので、3ヶ月で習得できるという話は本当だったと実感しています。

——授業の中では、具体的にどのようなことを学んだのでしょうか。

魚のさばき方や握り方、仕込みなどはもちろんですが、特に印象に残っているのは、先生の話の中にあった「一期一会」の考え方や、「5倍速行動」のお話です。これらは寿司職人としてだけでなく、人生においてもとても役立つと感じました。

——3ヶ月間の学びの期間はどのように感じましたか?

朝から夕方まで学校で学び、一旦自宅に帰って白衣などの洗濯をし、そのままお店に向かうというような、朝から夜中まで立ちっぱなしの日々でした。「3ヶ月」という短い期間だったからこそ乗り越えられたと思います。半年やそれ以上だったら、集中力や体力的に厳しかったかもしれません。

長年続けてこれた秘訣は、お客様とのつながり、食材へのこだわり、SNSの活用。

——卒業後の進路、現在のお仕事を教えてください。

卒業後は引き続き、「京すし」の女将として、主にお客様との接点を持ち、お席の割り振りなどを担当しています。お客様は常連の方が多く、中には3世代で通ってくださる方もいらっしゃいます。また、新規のお客様もいらっしゃるので、お客様への目配りや気配りが大切です。たとえば、お料理がまだ提供されていないところがあれば、「どうなっているの?」と確認したり、様々な対応をしています。

時には、カウンターに立って寿司を握り、調理の進行状況を確認しながら、指示を出すこともあります。主人が引退した後は、寿司の握りもしっかり引き継いで頑張っていきたいと思っています。

——飲食人大学の学びの中で、今の仕事に活かせていることはありますか。

全てと言っていいほど活かせています。特に先生がおっしゃっていた「5倍速行動」や「お客様にお金を返せても時間は返せない」という考えが印象に残っています。日頃から接客はしていましたが、一期一会の精神で、お客様が来店してくださった時間をより一層大切にしたいと思うようになりました。

——お店でのやり方と学校で教わったことの違いはありましたか?

「学校はこうだったよ」といったことをお店で言うこともありますが、飲食人大学では現場経験が長い先生が教えてくださるので、基本的な魚のさばき方は同じで、全体的に大きな差異はありませんでした。

——今の仕事のやりがいや、仕事において大切にされていることを教えてください。

先生から学んだ「お客様の時間」という考えを大切にしています。毎日吟味した魚でお寿司を握り、お客様に「美味しかった」と言っていただけるよう、美味しい時間を提供することを心がけています。

——「京すし」は50年以上続いていますが、長年続けてこれた秘訣はなんでしょうか?

私が関わっているだけでも、本当に紆余曲折があり、波あり谷ありの困難な道のりでした。長年続けてこれた秘訣は、主に4つあります。

まず、お客様に恵まれたことが大きいですね。3世代で通ってくださる方も多いですし、これは主に主人の人柄があってこそだと思います。

また、主人のこだわりは「出来るだけ天然の魚介類を使うこと」で、魚には妥協しない姿勢を貫いています。

そして、ネタの価格帯も高すぎず、家族で来店できる程度の価格帯を維持しているのが特徴です。

さらに、SNSの活用も大きく関連していると考えています。きっかけは、ある時に私がお店のブログを始めたことでした。その際に偶然知り合った方がヘビーブログさんで、全国からお客様が集まるようになりました。最近では、来店されたお客様がお店や料理の写真をSNSに投稿してくださるようになり、その投稿をみて新規のお客様が来てくださるというようなサイクルがありますね。

100年続く店を目指して。町寿司の魅力を守り、進化させる。

——今後の目標や意気込みを教えてください。

当店はいわゆる町寿司です。最近は予約のお客様も多いですが、気軽にふらっと立ち寄れるような店を目指しています。高級店のようなコース料理を提供する寿司店が増える中、原価的には厳しい面もありますが、仕入れを工夫しながら、町寿司としての特徴を維持していきたいと考えています。

同時に、「温故知新」の精神で、伝統的な江戸前の技法に新しい要素を加えていきたいと思います。例えば、私個人としては箱寿司や野菜寿司などを取り入れ、少しずつ新しい路線も開拓していきたいですね。

私自身もそれなりの年齢になってきましたので、あと20年ほど頑張り、その後は誰かに引き継いでもらえればと思います。できれば100年続く店になれば面白いなと考えています。

——最後に、入学を検討されている読者にメッセージをお願いいたします。

お店を営みながらの学習は大変な部分も多かったです。朝から夜中まで動き続ける毎日でしたが、「3ヶ月で必ず習得する」という強い意志を持って臨みました。学校に通うだけでなく、予習復習や休日の練習も欠かさず行いました。

先生方は本気で指導してくださるので厳しい時もありますが、その分、しっかりと技術を習得することができ、成長を実感できます。人生のうちのたった3ヶ月、しかし非常に濃密な3ヶ月を過ごすことで、新たな可能性が開けると思います。ぜひ、皆さんにも挑戦していただきたいです。

店舗情報

【店名】京すし(きょうすし)

【住所】大阪府大阪市都島区東野田町3-6-19

【問合せ】06-6352-3366

【営業日】火・水・木・金・土曜日

【営業時間】18:00~22:30

【定休日】月・日曜日

【URL】https://r.gnavi.co.jp/k846000/

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