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実家の老舗蕎麦屋「出雲そば きがる」の次期四代目として挑戦を続ける西村俊宏さん。飲食人大学での学びを活かした新たな未来とは。

西村俊宏さん(にしむら・としひろ)

将来、実家の老舗蕎麦屋「出雲そば きがる」を継ぐために、大阪の日本料理店で腕を磨いていた西村さん。しかし、新型コロナウイルスの影響で業績が悪化。お店の危機を乗り越えるため、飲食人大学で寿司の技術を学ぶことを決意しました。今回は、飲食人大学での学びを活かし、新たな価値を創造する、彼のその情熱とビジョンに迫ります。

《経歴》
2015年3月 公立大学 卒業
2015年5月〜 大阪・難波の個室和食「堀江燈花
      (株式会社オペレーションファクトリー)にて勤務
2018年11月〜 大阪・難波の鮨和食「紅炉庵
      (株式会社オペレーションファクトリー)にて勤務
2020年12月 飲食人大学(大阪校)寿司マイスター専科で修業
2023年11月〜 島根の実家にある老舗蕎麦屋「出雲そば きがる」にて勤務

コロナ禍が導いた新たな学びの機会。

——飲食人大学に入学されるまでの経緯や前職を教えてください。

もともと、実家がある島根の蕎麦屋を継ぐことを目標に、大学卒業後、大阪・難波の個室和食「堀江燈花」で働き始め、後に異動した「紅炉庵」と合わせて研鑽に励み、副料理長を任せていただけるようになりました。単品料理はもちろんコースや懐石料理の形式で、前菜から始まり、お造りや天ぷらも出していました。ところが、その最中に新型コロナウイルスの影響が広がり、お店も大きな打撃を受けました。

その状況で売上をどう回復していくか考えていた時に、会社から「寿司を学べる飲食人大学という学校があるから、行ってみてはどうか」と提案されました。

私は、大学を卒業後すぐに就職したため、職場でより実践的な基礎を仕事を通して学んできましたが、調理学校のように座学を通しての深い基礎は学んではいませんでした。そのため、そういった部分をしっかりと学びたいと思い、会社が負担して行かせてもらうこととなりました。

——飲食業の中でも「寿司」を選ばれたのは、なぜだったのですか?

会社としては売上が大きく落ち込んでいる中で、飲食業界の中でもどの業態が好調かを調査していました。その結果、コロナ禍でも「焼肉」と「寿司」は好調だというデータが出ていました。そこで、「寿司」に技術を持った職人を増やそうという会社の方針があり、その流れで私も寿司を学ばせていただくことになりました。

基礎から学ぶ大切さと「理を料る」精神を学んだ3ヶ月。

——実際に「飲食人大学」に入学してみて、いかがでしたか?

調理師学校に通ったことがなかったので、基礎から改めて学ぶことができたのはとても良かったですね。大阪校の講師 小林先生は非常に知識と経験があり、「なぜそうなのか」という部分まで深く掘り下げて教えてくださったので、自分の中にしっかりと落とし込むことができました。料理は「理を料る」と言いますが、改めて学べた貴重な3ヶ月でした。

学校に通い、放課後は仕事をしていたため、体力的にはきつかったですが、それでも、学校で学んだことをすぐに現場で活かせるというのは楽しく、充実した毎日を過ごすことができた3ヶ月だったと今でも思います。

——料理経験者である西村さんから見て、飲食人大学のカリキュラムはいかがでしたか?

授業に一つも無駄がなかったという印象があります。カリキュラム自体も長年の経験に基づいてしっかりと構成されていて、非常に練られていると感じました。教え方も「こうすれば良いんだな」と、私自身も学ぶことが多かったです。また、未経験の方々が3ヶ月でこんなに上達するんだという成長を目の当たりにして、毎日驚かされることが多かったです。

——授業の中で、特に印象に残っている授業や学びはありますか?

これという特定の授業というよりは、全体的に満遍なくしっかりと学べる内容だったという印象があります。経験者でも新たな発見や学びがあり、カリキュラムは充実していると感じました。

寿司の考え方を蕎麦に活かし、料理をさらに昇華させる。

——飲食人大学「卒業後の進路」を教えてください。

卒業後は、学んだことを活かして大阪・難波の鮨和食「紅炉庵」で寿司のメニューやコースを作りました。リピーターも増えていき、寿司だけでなく、お店自体を改めて好きになっていただけたお客様も多く、貢献できたのではないかと思っています。

その後、もともとの目標であった実家の店に戻り、新たな挑戦をしています。実家は蕎麦屋なので、寿司は出していませんが、寿司学校で学んだ魚の扱い方や、寿司のように一口でお客様に感動を与える工程は、今の蕎麦作りにも通じるものがあると感じています。その考え方をベースにして、料理をさらに昇華させ、より良いものを提供できるよう取り組んでいます。

——現在のお店の名前と特徴を教えてください。

お店は「出雲そば きがる」といい、私は4代目になります。日本三大そばの一つである「出雲そば」を中心に、さまざまな料理を提供し、お客様を喜ばせるお店だと思っています。創業95年になろうとしている老舗ですが、単に歴史があるだけでなく、地域のお客様や観光客一人ひとりに真摯に向き合い、大切に料理を提供しているお店です。

——飲食人大学の学びの中で、料理の仕事に活かせていることはありますか?

今の自分の考え方のベースを作る上で、飲食人大学の学びは非常に大きな役割を果たしていると思います。食材やお客様としっかり向き合うことが、私にとってとても大事な考え方になりました。大学で学んだことは、その基礎を築くのに非常に役立ったと思っています。

「理を料る」という言葉にもあるように、理にかなった料理を追求することが料理の本質だと感じていて、寿司のように一口でその理を完結させるという考え方は、特に勉強になりました。寿司のコース作りなども学べましたが、その流れもまた大きな学びで、どうすればもっとこの料理が美味しくなるか、どうすればこの魚をもっと引き立てられるかを、深く考える癖がつきました。食材が持つ旨味や香り、美しさをどう引き出すかを常に考えるようになったのは、飲食人大学での学びが大きいですね。

また、もう一つ大きかったのは、お客様と向き合う姿勢です。和食をやっていた時は、厨房で調理することが多く、ヘルプでホールに出た時以外はお客様の反応を直接見る機会があまりありませんでした。しかし、寿司はカウンターでのサービスが基本ですし、授業でもカウンターでの接客について学びました。

卒業後の実務でも、お客様が一口食べて笑顔になる瞬間を直接見ることができ、飲食業のやりがいや面白さに改めて気づかされました。お客様にもっと喜んでもらうためにはどうすればいいか、常にお客様の視点で考えるようになったのは大きな成長だと思います。

例えば、寿司であれば、お客様の口の大きさに合わせてシャリやネタの大きさを調整するなど、細かい部分まで考えることが求められます。常に「お客様に何が喜ばれるか」を考える姿勢は、今の仕事にも活かされています。

こうして改めて振り返って、思いますが、オペレーションファクトリーで学ばせていただいたことは私の人生の大きな礎であり、飲食人大学での学びも私の今の考え方の大事な根幹に繋がっていて、感謝の気持ちでいっぱいです。

——今の仕事のやりがいや、仕事において大切にされていることを教えてください。

やはり、飲食のやりがいはどんな業態でも同じだと思いますが、お客様を笑顔にすることが一番の楽しみですね。そのために時間を費やし、お客様から「美味しい!」という言葉を笑顔でいただいた瞬間に、すべてが報われたと感じます。心の底から「やって良かった」と思える瞬間で、それが仕事のやりがいの全てだと感じます。

仕事で大切にしていることは、やはり食材の大切さです。私たち料理人は、良い食材がなければお客様を笑顔にすることはできません。大阪では市場があり、豊富な食材の中から良いものを選んで提供することができました。しかし、実家のある島根県では、日本海で魚が豊富に獲れるものの、天候によっては全く手に入らないこともあります。そうした状況で、食材のありがたみを改めて感じるようになりました。

生産者や市場の人々がいてこそ、私たちはお客様に喜んでもらう料理を提供できるので、食材に対しても、そしてその食材を支える人たちに対しても、もっと感謝しなければならないと思うようになりました。また、働く仲間に対しても同じように大切に接することが必要だと感じています。お客様だけでなく、一緒に働く仲間も重要な存在であり、彼らと協力しながらお客様に喜んでいただけるよう励んでいきます。

結局、人と食材を大切にすることが、私の仕事の根底にある大事な考え方です。

食材と人を大切に。出雲そばを未来へ繋ぐ挑戦。

——今後の夢や目標について教えてください。

まだ具体的なビジョンが定まっていない部分もあるのですが、食材を大切にし、人を大切にするという根底の考えを持ちながら、今のお店をもっと盛り上げていきたいと思っています。出雲そばは松江でも有名な観光地の食事で、島根と言えば出雲そばというイメージがあります。しかし、実際にはその作り手である料理人が減少し、後継者問題に悩まされているのが現状です。

そういった中で、私たちのお店が売上を上げることで、蕎麦の魅力や料理人の素晴らしさを微力ながらも発信していきたいと思っています。それによって、後継者問題の解決にも寄与できればと考えています。自分の店をより良くしていくことを通じて、未来へとつなげていけたらいいなと思っています。

そのために、今はコツコツと売上を伸ばす努力をしています。やはり、お客様の笑顔を作ることが最も重要ですので、そのために着実に取り組んでいるところです。

——最後に、入学を検討されている読者にメッセージをお願いいたします。

経験者としてお伝えしたいのは、基礎が非常に大事だということです。自分が知っていると思っていても、学ぶ姿勢を持つことで新たな気づきが必ず得られます。それは、学ぶ側の心構えによるものだと思います。

入学を検討している方は、人生の大きな決断をしようとしている方が多いと思います。3ヶ月という期間や金銭的な負担もあるかもしれませんが、挑戦することで新しいスタートラインに立つことができると思います。一歩踏み出せば、きっと良い経験がたくさん待っているはずです。

その先がどう道を切り開くかは、自分次第ですので、その挑戦心を大切にして、一歩を踏み出してみてください。

店舗情報

【店名】紅炉庵(こうろあん)

【住所】大阪市中央区 難波4-3-21 ZAナンバビル1階

【問合せ】06-4397-6666

【営業日】月・火・水・木・金・土・日曜日

【ランチ】11:30〜

【ディナー】17:00〜

【定休日】年末年始

【公式HP】https://www.opefac.com/restaurant/kouroan/

店舗情報

【店名】出雲そば きがる(いずもそば きがる)

【住所】島根県松江市石橋町400-1

【問合せ】0852-21-3642

【営業日】月・水・木・金・土曜日 11:00~15:00

     木・金・土曜日 17:00~19:30

     日曜日・祝日 11:00~16:30

【定休日】火曜日(祝日の場合は振替営業あり)・第3水曜日(月により変更有)

【公式HP】https://www.izumosobakigaru.jp/

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