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創業52年のバトンを受け継ぐ。相澤亜香根さんが新店舗で挑む「重寿司」の第二章とは。

相澤亜香根さん(あいざわ・あかね)

コロナ禍での立ち退きなど数々の困難を乗り越え、創業52年の「重寿司」を受け継いだ相澤亜香根さん。飲食人大学での3ヶ月間で得た学びを活かし、創業75周年に向けた新たな挑戦について伺いました。

《経歴》
2003年3月〜 栄養士養成専門学校卒業
2003年4月〜 総合病院にて管理栄養士として勤務
2007年9月〜 料理学校(イタリア)卒業
2007年10月〜 「有限会社重寿司」にて勤務
2023年9月 飲食人大学(東京校)寿司マイスター専科で修業
2024年2月〜 「重寿司」移転

立ち退き危機を乗り越えて、新たな寿司店づくりへ。

——飲食人大学に「入学されるまでの経緯やご経歴」を教えてください。

もともと栄養士の専門学校に通い、その後、総合病院に勤めて管理栄養士になりました。しかし、病院勤務が徐々に辛くなってきたこともあり、全く異なる分野ではありますが、興味のあったイタリア料理を学びたいと思うようになりました。実家の寿司屋で働く前に、イタリアで食文化やスローフードについて勉強しようと決意し、短期間(半年や1か月ごと)に分けて何度かイタリアに留学しました。その後、日本に戻ってから寿司屋に入り、勤めて17年になります。

飲食人大学には2023年の夏に入学しました。実は、お店が50年を迎えたタイミングで立ち退きが決まり、その話を2020年頃、ちょうどコロナが広がる直前に告げられました。お店を閉めるか、場所を変えて続けるかで迷い、コロナ禍の中でずっと悩みました。

悩んだ末、やはり店を継続させたいという思いが強くなり、開店に向けて何か準備できることはないかと考えました。例えば、新しいお店づくりの構想や、寿司について改めて学ぶ時間を持つなどです。そこで、立ち退きの半年前に飲食人大学に入学することを決めました。

——飲食業の中でも、なぜ「寿司」を選んだのですか?

もともと私の祖父が魚屋を営んでいて、その後、父が52年前に寿司屋を始めました。私は3姉妹のひとりとして育ち、小さい頃から両親のお店が大好きでした。とはいえ、自分がそのお店を継ぐことは、当初まったく考えていませんでした。

しかし、両親が年を重ねるにつれ、お店を閉めるという話が出るようになりました。そのときに「自分がこの店を継続させたい」という気持ちが湧き、私がお店に入る決意をしました。そして、今では親の後を継いでお店を続けています。

限界への挑戦!寿司漬けの3か月間で得た学びと仲間達との交流。

——寿司職人を目指すにあたって、「飲食人大学」で学ぼうと思った理由を教えてください。

もう1か所、別の学校も見学に行きましたが、もともと寿司屋で長く働いていたこともあり、「ここではあまり新しく学べることがないかな」と感じました。その後、飲食人大学を訪れた際に、先生方の熱意や、学ぶ内容に魅力を感じました。また、規模はこじんまりしているものの、学生同士が切磋琢磨しながらも和気あいあいとした雰囲気がとても心地よく、自分の学びたい方向性と飲食人大学の内容が合っていると感じ「ここで学びたい」と思い、入学を決めました。

——実際に「飲食人大学」に入学してみて、いかがでしたか?

仕事を続けながらの通学だったこともあり、とにかく毎日が大変でした。寿司屋で長年働いてきましたが、これほど寿司に没頭した3か月間は人生で初めてでした。寿司のことをずっと考え、食べ、語り合い、まさに「寿司漬け」になった時間でした。

そして、その中で仲間たちとの交流を通じて、改めて寿司の素晴らしさや奥深さに気づくことができました。みんなで寿司を食べに行ったり、それぞれの夢や考えを共有したりする時間も、とても刺激的でした。普段の生活では出会えない、多様な背景を持つ仲間たちとの交流は、貴重な経験でした。こうした濃密な3か月は、自分にとって人生の中で二度とないかけがえのない時間になったと思います。本当に感謝しています。

——とても大変だったと思いますが、3ヶ月やり切れた理由などありましたら教えてください。

私には期限が決まっていたんです。1月の初めにはお店を閉めなければならないという明確なゴールがありました。飲食人大学を卒業したらすぐに、店の内装や外装、コンセプトなど、さまざまな準備を始めなければならなかったんです。そのため、常に自分を奮い立たせて走り続けているような感覚でした。

お店を営業しながら飲食人大学に通ったのは、失敗だったんじゃないかと悩んだこともありました。しかし、尾上先生から「学校で学んだことをすぐにお店で練習できるし、お客様に提供して評価をいただくこともできる。3ヶ月間休んで通うのではなく、営業しながら学んでて大丈夫だよ。そうすれば、お客様を待たせることなく、閉店後すぐに新しいお店を開けられるんだから。全力で応援しますよ。」と言っていただき救われました。

3ヶ月で目に見える成長。本気の大人たちが見せた根気と変化。

——飲食人大学の授業は、実際にいかがでしたか。

カリキュラムの3ヶ月目にある提供実習(対面授業)は思った以上に緊張しました。普段お店で立ち仕事をしているのに、それとは違う新鮮な刺激がありました。仲間をサポートしたり、逆にサポートしてもらったりしながら、一緒に作り上げていく感覚がとても楽しかったです。

——飲食人大学では未経験者でも3ヶ月で技術修得できるカリキュラムが組まれていますが、経験者の立場から、そのカリキュラムはどう感じましたか?

お店に入ってからがスタートだと思いますが、私でも本当に大変でつらかったので、未経験の方たちがあれだけ頑張っていたのはすごいと思いました。授業では、デモンストレーションで終わらず、実際に手を動かしてさまざまな作業を体験できたことがとても良かったと思います。

昔は動画を撮るなんて考えもしませんでしたが、授業の中で動画を撮影して、それをみんなで共有し、『ここはこうだったよね』『あそこはこうすべきだったよね』と何度も確認しながら練習できたのもとても勉強になりました。

また、未経験者に教える機会もあり、人に教えることで教え方を学び、自分自身も改めて勉強し直す必要性を強く感じました。

——未経験の仲間の成長を間近でご覧になっていかがでしたか?

本当に3ヶ月でこんなに一生懸命取り組む大人たちの根気ってすごいなと感心しました。中学生や高校生ではなく、10代後半から20代、30代、40代といった年齢層の人たちが、自分の意思で時間とお金をかけて飲食人大学に来て、本気で頑張る姿を見て、成長ぶりに驚きました。

少し上から目線に聞こえるかもしれませんが、『技術が伸びてる!』と、それくらい目に見える成長があるのは驚きでした。同時に、自分もちゃんと成長できているのかなと考えながら、その3ヶ月を過ごしていました。

「町の寿司屋」として続く歴史。地域と共に歩むお店づくり。

——飲食人大学「卒業後の進路」を教えてください。

飲食人大学を卒業した後は、立ち退きのため別の場所に新しい店舗を作る準備を進め、2024年の2月に今のお店を開業しました。現在は、オープンして7ヶ月が経ったところです。

そして、創業52年の『有限会社重寿司』を引き継ぎ、代表取締役を務めています。町寿司なので、雑用を始め、仕入れや、出前に出たり、時には板場に立ったり、さまざまな業務をこなしています。両親もまだ健在で、板前さんもいるので、みんなで協力してお店を回しているといった感じです。

——飲食人大学の学びの中で、今の仕事に活かせていることはありますか。

たとえば、コース展開についても提供実習(対面授業)の中で得た知見をもとに考えたものですし、すべての学びが活かされていると思います。

また、いまだに先生や寿司好きの仲間たちとも繋がっていて、お店づくりに関しても、様々なことを教えてもらったり、わからないことがあれば相談しています。

——今の仕事のやりがいや、仕事において大切にされていることはなんですか。

とにかく魚を大切に扱うことを心がけています。魚の命をいただいて商売をしているので、一つひとつ丁寧に扱い、美味しく料理し、お客様に喜んでいただけるよう努めています。お客様が美味しい料理を食べて、心から幸せな気持ちで笑顔になってもらいたいと思っています。そのため、料理の味はもちろん、雰囲気やお店全体の空間づくりにもこだわり、日々頑張っています。

——現在のお店の特徴や雰囲気、どのようなお料理を展開されているか教えてください。

昔から変わらず営業しています。駅からかなり離れていて、住宅地のような場所にありますが、そんな人通りの多くない場所で50年以上続けてきました。今でも地域に根ざした、コミュニティのような「町の寿司屋」として営業しています。

アラカルトの料理も提供していて、おまかせコースだけでなく、さまざまな単品メニューも楽しんでいただけるようにしています。お客様が気軽に入れる雰囲気を大切にしつつも、少し高級感を感じられる落ち着いた空間を目指して、お店づくりに取り組んでいます。

「重寿司」75周年へ。地域に根ざした寿司屋の未来を描く。

——今後の夢や目標について教えてください。

重寿司」の75周年を目指しています。お店を続けていくことが目標ですが、変わらずお客様に喜んでいただけるような営業を続けていきたいです。料理教室を開いたり、音楽が好きなので、お店にオペラ歌手や他のアーティストを招いて、寿司を食べながら楽しむイベントも企画したいと考えています。そんなふうに、私の店を使ってみんなが笑顔になれるような活動を続けていきたいと思っています。

そして、先日尾上先生が出演していた「ミヤネ屋」を拝見して、海外で仕事をしてみたいという気持ちが芽生えました。何年や何ヶ月という単位ではなく、1週間や2週間、お店を閉めて海外で寿司を握る経験ができれば、自分にとって大きなスキルアップにもなり、刺激になるのではないかと思います。

——最後に、入学を検討されている読者にメッセージをお願いいたします。

すごく大変な3ヶ月になると思いますが、自分のスキルアップを考えていたり、本当に寿司が好きな方であれば、この3ヶ月は非常に貴重な期間になると思います。もし興味があるなら、何度か見学をして、本当にやりたいと決めたら、3ヶ月間どっぷり「寿司漬け」になって勉強してみると、見える未来があるのではと思います。本気で取り組まないと難しいかもしれませんが、私も仕事をしながら子育てをしつつ頑張れたので、皆さんもきっとできると思います。

店舗情報

【店名】重寿司(しげずし)

【住所】神奈川県横浜市鶴見区駒岡4-21-1 近藤ビル1F

【問合せ】045-573-3605

【営業日】月・火・木・金・土・日・祝日・祝前日・祝後日

【ランチ】12:00〜【ディナー】17:00〜

【定休日】水曜日

【URL】https://tabelog.com/kanagawa/A1401/A140204/14095280/

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