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わずか半年足らずでマレーシアの高級寿司店で腕をふるう鯨岡慎平さん。大手金融会社を辞めて、寿司職人へなったワケとは。

鯨岡慎平さん(くじらおか・しんぺい)

大手金融サービス会社で法人営業を務めていた鯨岡慎平さん。海外で働くことを夢見て、30歳で寿司職人への転身を決意しました。飲食人大学での短期集中カリキュラムを経て、わずか半年たらずでマレーシアの高級寿司店「Sushi Azabu」で腕を振るうまでに。そんな彼の熱い想いと挑戦の日々を追いました。

《経歴》
2015年3月 私立大学 卒業
2015年4月〜 ホスピタリティ会社に就職
2018年12月〜 不動産テック会社に就職
2022年6月〜 大手金融サービス会社に就職
2023年12月 飲食人大学(東京校)寿司マイスター専科で修業
2024年1月〜 東京・麻布台「鮨麻布」にて勤務
2024年2月〜 マレーシア・クアラルンプール「Sushi Azabu」にて勤務

立ち退き危機を乗り越えて、新たな寿司店づくりへ。海外進出の夢を叶えるために選んだ道。

——飲食人大学に「入学されるまでの経緯やご経歴」を教えてください。

飲食人大学に入学する前は、大手金融サービス会社で働いており、営業職として法人営業を担当していました。飲食人大学に入学したのは、私が30歳の年だったのですが、以前から「海外に行きたい」という目標を持っていました。

しかし、大手の金融サービス会社で働いていたとはいえ、すぐに海外に行く経験を得るのは難しいと理解していました。そのため、さまざまな記事を読んだり、「海外に行く方法」を調べたりしている中で、寿司職人になることが海外に行きやすい手段の一つであることに気づきました。

寿司職人は、海外で働く際にビザが取得しやすいことや、日本人の寿司職人が海外でも高く評価されるオリジナルな存在であることが分かったのです。そのため、現職を続けるよりも寿司職人を目指す方が、海外進出の可能性が高いと考え、この道を選びました。

未経験でも安心の短期集中カリキュラム。

——寿司職人を目指すにあたって、「飲食人大学」で学ぼうと思った理由を教えてください。

他にも寿司の専門学校はいくつかありますが、飲食人大学が一番最初に目に留まったというのが選んだ理由の一つです。次に、短期集中で集中的に学べるカリキュラムがある点も魅力でした。私は海外に早く出たいという思いが強く、限られた時間の中で技術やマインドを徹底的に身につけたいと考えていたため、この短期集中型のプログラムがとても合っていると感じました。

さらに、東京校が恵比寿という都心にあり、通いやすい立地だった点も、飲食人大学を選んだ大きな理由の一つです。

——実際に「飲食人大学」に入学してみて、いかがでしたか?

現場で役立つ技術をしっかりと身につけられたことが非常に良かったです。寿司職人といえば、長時間の労働や細かな作業が求められる仕事というイメージがあると思いますが、特に重要なのは衛生管理を徹底し、清潔で丁寧な仕事をする姿勢だと感じました。

私は入学前、包丁を握った経験もほとんどありませんでしたが、東京校で講師の尾上先生から衛生管理の重要性や、細かい作業を丁寧に進める方法を徹底的に教えていただきました。そのおかげで、現場に出ても大いに役立っています。そういった点で、飲食人大学に入学して本当に良かったと今でも思っています。

——カリキュラムの中で特に印象に残っている授業や、先生のお言葉があれば教えてください。

印象に残っているのは、「限られた時間の中で効率よく作業を進める段取り」の重要性を徹底的に教えていただいたことです。ダラダラと作業をするのは誰にでもできますが、次に何をすべきかを先の先まで考え、計画的に進める力を身につけることができました。また、その段取りを実行するための準備の大切さについても、みっちりと教わりました。

さらに、衛生管理の徹底も非常に印象的でした。魚を丸の状態からさばく際には、血や内臓が出る場面もありますが、手元を常に清潔に保ちながら作業を進めることを学びました。これは、実際にカウンターに立ち、お客様の目の前で寿司を握る際に非常に役立っています。

こうした「基礎の基礎」とも言える内容は、現場に入った時に最も重要視される部分だと思います。それをしっかり教えていただけたのが、飲食人大学の大きな魅力でした。

——未経験から寿司職人を目指されたとのことですが、カリキュラムで未経験だからこそ良かったと思う点があれば教えてください。

未経験だからこそ良かった点は、料理の経験がない分、先生から教えていただいたことを素直にそのまま実行に移せたことです。同期の中には料理経験がある方もおり、過去の経験と照らし合わせながら実践する姿が見られました。ただ、その場合、以前のやり方に固執してしまうこともあるように感じました。未経験の私は、先入観なく新しい知識や技術を吸収できたのが良かった点だと思います。

入学前は、未経験ゆえの不安もありましたが、飲食人大学のカリキュラムは0から学べる内容が充実していました。特に、短期集中で毎日PDCAを回しながら進める授業形式が非常に効果的でした。未経験の方も安心して取り組める環境が整っていると感じています。

クアラルンプールで実質2番手として活躍。

——飲食人大学「卒業後の進路」を教えてください。

昨年12月中旬に飲食人大学を卒業した後、株式会社Plan・Do・Seeに入社しました。この会社が運営する「鮨麻布」というブランドに所属しています。ビザの取得に少し時間がかかるため、最初は東京の麻布台ヒルズにある「鮨麻布 東京店」に配属されました。しかし、日本人の寿司職人はビザの取得が非常に早く、わずか1か月で取得することができたため、今年の2月からクアラルンプール店で勤務しています。

クアラルンプール店では、配属後の1~2ヶ月間はバックキッチンで仕込みや料理の内容、作業工程などを学びました。そして、3月末頃からカウンターに立ち、お客様に寿司を握る仕事を任されています。役職としての肩書きはまだありませんが、店舗全体が10名ほどの小規模な構成で、日本人シェフは2名のため、実質的には2番手に近いポジションで仕事をさせていただいています。

——鯨岡さんが提供されているコースの内容について教えてください。

現在提供している夜のコースは、17品のお任せコースのみです。前菜が2品、3品目にお刺身、その後に合計で10貫の握りをお出しします。中盤には焼き物や温かい料理を提供し、最後にお味噌汁、玉子、デザートで締めくくります。このコースは、最大10名様まで対応でき、2時間以内で回転させながらしっかりとお客様に提供できるようになっています。

——そのコースの日本円での価格はどのくらいになりますか?

コースの単価は現地通貨で588リンギットです。現在のレートで1リンギットが約34円なので、単純に34倍すると、日本円で大体2万円前後の価格になります。この金額は、マレーシアの中ではかなり高級な部類に入ります。日本では2万円程度だと、高級ではあるもののそこまで特別に高い寿司店というわけではないかもしれませんが、こちらでは高級店として認識されることが多いです。

海外で活躍する寿司職人の魅力と苦労。

——飲食人大学の学びの中で、今の仕事に活かせていることはありますか。

どれも本当に現場で役立っていると感じていますが、特に挙げるとすれば「魚の水洗い」の練習です。魚を丸の状態から頭と内臓を取り、綺麗に掃除して3枚おろしにするまでの工程を、学校では毎日ストップウォッチを使ってタイムトライアル形式で練習しました。さまざまな魚でこの作業を繰り返したことで、現場でも自信を持って対応できるようになりました。

また、料理未経験者として特に助けられたのは、仕込みの基礎を徹底的に教えていただけたことです。例えば、小さな前菜の作り方や刺身の盛り付け方、アナゴの煮方など、細かな技術を丁寧に学ぶことができました。これらの基礎知識がしっかり身についているおかげで、現場でもスムーズに仕事を進めることができています。

特に未経験者にとって、このような基本をしっかり学べる環境はとても貴重だと実感しています。

——卒業後、日本と海外のお寿司屋さん両方で経験されたと思いますが、海外ならではの苦労や大変さ、またその魅力について教えてください。

海外での苦労としてまず挙げられるのは、やはり言語の壁です。私自身、英語があまり得意ではなく、その中で現地スタッフのマネジメントをしなくてはいけないというところに苦労しています。特に、日本人は一つの仕事を完了してから次の作業に進むというスタイルが一般的ですが、海外では複数の作業を同時に進めようとして中途半端になってしまうことが文化的に見られることがあります。そのため、現地の国民性や文化を理解した上で、業務を一つ一つ丁寧に教え、管理する必要があります。この点が特に大変だと感じています。

一方で、海外で働く魅力も多く感じています。特にお寿司という日本文化に対して、海外のお客様は非常に興味を持ってくださいます。私も最初は、自分がまだ経験不足の中で握る寿司をどれだけ評価してもらえるか不安がありました。しかし、日本人が握るお任せ寿司に対し、海外のお客様は非常に喜んでくださり、時には手放しで称賛してくれることも多いです。

これに対し、日本ではお客様の目が厳しく、細かい点まで評価されることが多いです。そのため、海外では日本の技術や文化を活かしながら、純粋に楽しんでいただけるというやりがいを感じられるのが魅力だと思います。寿司職人という仕事は、日本人が海外で活躍しやすい分野だと改めて実感しています。

——最近、寿司職人が海外で稼げるというような話をよく耳にしますが、鯨岡さん自身、日本でサラリーマンをしていた時と比べて良いと思う点はありますか?

お金の面については、やはりお店によると思います。私が今在籍している株式会社Plan・Do・Seeでの給与は、日本のサラリーマンの平均より少し低めです。実際、寿司職人になる前の方が給与は高かったです。しかし、私はそのお給料が少し下がっても、早く海外で経験を積むことを選びました。海外で英語を学び、握る経験を積むことで、5年後、10年後にチャンスが広がると考えています。給与については、今後の成長に期待しています。

次に、働く環境についてです。これもお店によって全然違うと思いますが、私は現在、職場に近い場所に住んでおり、これを魅力に感じています。お寿司屋さんはどうしても朝早く、夜遅くなることが多いですが、私たちは職場に近い場所で働いているので、通勤に時間がかかりません。また、マレーシアは家賃が安く、私は月5万5000円程度で広めの55平米のワンルームに住んでいます。コンドミニアムタイプの物件で、プールやジムがついており、快適な生活を送っています。これが日本だと同じ条件の物件で20万円以上かかると思います。

——今の仕事のやりがいや、仕事において大切にされていることを教えてください。

私にとってのやりがいは、カウンター商売として、お客様の反応がダイレクトに感じられる点です。自分が握ったお寿司や盛り付けた料理を、お客様が美味しいと言ってくださるのは本当に嬉しいですし、逆に「違う」と感じた時にはそのフィードバックがすぐに返ってきます。前職は法人営業だったので、消費者の反応が直接感じられなかったのですが、今はBtoCの形でお客様と接しているため、表情や反応を直に感じることができ、やりがいを強く感じます。

また、お寿司の世界は「終わりがない」と感じています。やればやった分だけ技術が向上し、逆にやらなければ成長しません。日々、午前中にできなかったことを午後にできるように、また今日できなかったことを明日にはできるようにと、常に自分の技術を磨き続けています。その積み重ねの中で自分自身の成長を感じることができ、非常に大きなやりがいを感じています。

次に大切にしている点についてですが、やはり「綺麗に仕事をする」ということです。カウンターに立つ以上、お客様から常に見られている意識を持って仕事をしています。特に海外では、日本人の寿司職人が注目されることが多いので、目の前の仕事をどれだけ丁寧に、綺麗にやるかが重要です。お客様が直接目にする部分だけでなく、裏での作業にもその意識を持ち続けています。

また、現在働いているお寿司屋さんでは、人数が多くないため、時には自分だけで対応しなければならない範囲が広いです。ですが、もし早く終わることがあれば、他のスタッフの手伝いをしたり、お互いにサポートし合うことも大切にしています。チームワークや協力を大事にしながら、日々の業務を進めています。

努力が実を結ぶ、寿司職人という職業。

——鯨岡さんの今後の夢や目標を教えてください。

今後の夢としては、マレーシアで非常に過ごしやすく、働きやすい環境ではあるのですが、やはりお寿司職人としてのキャリアを考えると、今後他の国でのチャンスも視野に入れていきたいと考えています。お給料や働く環境を含めて、良いチャンスがあれば他の国で寿司職人として働きたいと思っています。現在32歳なので、50歳や55歳ぐらいまでは海外で経験を積みたいと思っています。そして、年齢を重ねる中で、もし日本に帰りたいと思う時期が来れば、地元で自分の寿司屋を開くというのも漠然とした目標として考えています。

また、行ってみたい国については、マレーシアの隣国であるシンガポールや、現在注目されているドバイなど、国際金融都市や富裕層が多く集まる地域に魅力を感じています。そういった場所でお寿司を握るチャンスがあれば、非常に魅力的だと思っています。

——最後に、入学を検討されている読者にメッセージをお願いいたします。

おそらく、寿司職人になることを迷っている方も多いと思いますが、ぜひ一歩を踏み出してみてください。飛び込むことで、全く違う景色が広がっていると感じるはずです。

寿司職人という仕事は、手に職がつく職業であり、努力すればするだけ自信もついてきます。そういった面では非常にやりがいがあります。自分の成長を感じながら、明るい未来が開ける仕事です。

また、未経験の方も多いと思いますが、飲食人大学に入学すれば、基本からしっかりと学べる環境が整っています。不安な部分もあるかもしれませんが、心配せずに新しい挑戦をしてみてください。きっと今までとは違う、充実した人生が待っています。

店舗情報

【店名】Sushi Azabu(鮨麻布)

【住所】201A-C, Jalan Ampang, Kuala Lumpur City Centre,

       50088 Kuala Lumpur, Federal Territory of Kuala Lumpur

【問合せ】03-2382-3283

【営業日】月・火・水・木・金・土・日曜日

【ランチ】12時〜【ディナー】18時〜

【公式HP】https://www.isetankl.com.my/sushi-azabu/

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