調理未経験から、ベルリンの寿司職人へ。海外で働くために技術を学んだ江田郁美さんの挑戦
海外で飲食の仕事をしたい。
日本食に関わる仕事をしたい。
そう考えていても、調理経験がない状態では、なかなか希望する仕事に就けないことがあります。
今回ご紹介するのは、飲食人大学 大阪校45期を卒業した江田郁美さんです。
江田さんは、入学前から飲食店でサービススタッフとして働いていました。しかし、調理の現場に入りたいと思っても、未経験であることを理由に、なかなか採用にはつながりませんでした。
そこで、「本当に調理の仕事をしたいなら、お金をかけてでも技術を学ぶ必要がある」と考え、飲食人大学へ入学。
3ヶ月間、魚の捌き方や寿司の基礎を学び、現在はドイツ・ベルリンの寿司店「Nichigetsu Berlin」で働いています。
調理未経験から、なぜ寿司職人を目指したのか。
そして、海外の寿司店で働く今、飲食人大学での学びはどのように活きているのでしょうか。
■ 調理の仕事に就きたくても、未経験では採用されなかった
江田さんは、飲食人大学に入学する前、飲食店のサービススタッフとして働いていました。
ホール業務の経験はあったものの、調理経験はありませんでした。
本当は調理の現場で働きたい。
けれど、未経験であることを理由に、希望する仕事にはなかなか就けない。
結果として、決まるのはサービススタッフとしての仕事ばかりでした。
飲食業界に関わっていても、ホールと調理では求められる経験が異なります。
料理を作る側に回りたいと思っても、実務経験がないと、最初の一歩を踏み出すことが難しい。
江田さんは、その壁に悩んでいました。
だからこそ、自分で技術を身につける必要があると感じるようになります。
「未経験だから採用されない」のであれば、まず学ぶしかない。
その思いが、寿司を学ぶきっかけになりました。
■ 海外で高まる、日本人寿司職人への需要
江田さんが寿司職人を目指した背景には、海外での日本食需要の高まりがありました。
ここ数年、海外では寿司店や日本食レストランが増えています。
一方で、現地で寿司を握っているのは、日本人ではない職人であることも少なくありません。
もちろん、国籍に関係なく素晴らしい職人はいます。
ただ、江田さんはその状況を見て、日本人の寿司職人に対する需要が高まっているのではないかと感じました。
寿司は、日本を代表する食文化の一つです。
海外で日本食を提供する時、技術だけでなく、食材の扱い方、衛生意識、味の考え方、所作、説明の仕方まで含めて「日本らしさ」が求められる場面があります。
現地で日本食レストランが増えているからこそ、本格的に寿司を学んだ日本人職人の価値は高まっている。
そう感じたことが、江田さんの背中を押しました。
■ 3ヶ月でどこまで成長できるのか。不安もあった
入学前に不安がなかったわけではありません。
一番大きかったのは、3ヶ月という期間で自分がどこまで成長できるのかということでした。
調理経験がない状態から、魚を捌き、寿司を握り、現場で働けるようになるのか。
その不安は当然のものです。
周囲の反応も、必ずしも前向きなものばかりではありませんでした。
特に、飲食の厳しさを知る祖母からは反対されたといいます。
「飲食をなめてはいけない」
「3ヶ月で本当にできるのか」
そうした厳しい言葉もありました。
しかし江田さんには、これまで未経験を理由に調理の仕事へ進めなかった経験がありました。
このまま同じ場所にいても、状況は変わらない。
本当に調理の現場で働きたいなら、自分から学びに行く必要がある。
そう考え、挑戦することを決めました。
■ 飲食人大学を選んだ理由
江田さんが飲食人大学を知ったきっかけは、インターネット検索でした。
実家が大阪だったこともあり、「大阪 寿司学校」で調べたところ、飲食人大学が出てきたといいます。
他県へ行く発想はなく、大阪で通えることは大きな条件でした。
また、海外在住者にとって「3ヶ月」という期間も重要でした。
長期間日本を離れると、現地での永住権や滞在に関する手続きが必要になる場合があります。
そのため、6ヶ月や1年ではなく、3ヶ月で集中的に学べることは、海外在住の江田さんにとって現実的な選択肢でした。
決め手になったのは、講師の経歴の豊富さと、実技中心のカリキュラムです。
知識だけでなく、実際に手を動かして学べること。
魚を捌き、仕込み、握る時間が多いこと。
未経験から現場を目指す上で、そこに大きな意味を感じました。
■ 初日から「一秒たりとも油断できない」と感じた授業
実際に入学して、江田さんが最初に感じたのは、細かくメモを取る必要性でした。
一度聞いたことでも、翌日には記憶があやふやになっている。
それほど、授業では多くのことを学びます。
初日から米の研ぎ方について学び、基本の細かさに驚いたといいます。
寿司は、魚を捌いて握れば完成するものではありません。
米の扱い方、シャリの状態、包丁の入れ方、魚ごとの特徴、衛生管理、段取り。
一つひとつの作業に意味があり、どれも現場では曖昧にできません。
江田さんは、授業が始まってすぐに「一秒たりとも油断できない」と感じました。
未経験だからこそ、聞き逃さない。
分からないことをそのままにしない。
その姿勢で、3ヶ月間の学びに向き合っていきました。
■ 苦戦しただし巻き玉子と、緊張で食事が取れなかった提供実習
在学中に特に苦労したことの一つが、だし巻き玉子でした。
魚を捌くことや寿司を握ることは、練習を重ねる中で少しずつ手応えが出てきます。
しかし、だし巻き玉子には今でも苦手意識があると話します。
火加減、巻き方、力加減、タイミング。
シンプルに見える料理ほど、繊細な技術が求められます。
また、最終月に行われる提供実習も大きな経験でした。
提供実習では、実際にお客様を迎え、自分たちで考えた料理や寿司を提供します。
江田さんは緊張のあまり、しばらくご飯が食べられないほどだったそうです。
それでも今振り返ると、とてもありがたい経験だったといいます。
お客様を前にして料理を出す緊張感。
失敗できないプレッシャー。
それでも、目の前のお客様に喜んでもらうために準備し、提供すること。
その経験は、現在の仕事にもつながっています。

■ 魚を捌けるようになったことで、自信がついた
江田さんが一番成長を感じたのは、魚を捌けるようになったことでした。
入学前は、片刃の包丁を触るのも初めてに近い状態。
魚をどう扱えばよいのか、どこに包丁を入れるのかも分からないところからのスタートでした。
それでも、授業で繰り返し魚に触れることで、少しずつ手が動くようになります。
魚の構造を理解し、包丁の入れ方を覚え、身を崩さずに捌けるようになる。
その変化は、自分自身への大きな自信につながりました。
海外の寿司店で働く上でも、魚を扱えることは重要です。
どの魚をどう仕込むのか。
素材によって扱いをどう変えるのか。
その基礎を学校で学んでいたことが、現在の現場でも役立っています。

■ 市場見学と提供実習で学んだ、現場に必要な視点
印象に残っている授業として、江田さんは市場見学を挙げています。
寿司職人にとって、魚を捌けることだけでなく、魚を見る目も大切です。
どのような魚が市場に並ぶのか。
鮮度や状態をどう見極めるのか。
食材がどのように現場へ届くのか。
そうした流れを知ることは、寿司店で働く上で大きな学びになります。
また、提供実習も毎回反省点があり、学ぶことが多かったといいます。
コースの組み立て。
仕込みの順序。
提供する時間の計算。
握りの進行。
お客様を待たせない段取り。
こうした経験は、現在働いているベルリンの店舗でもそのまま活きています。
実際に、現在の職場では昼にちらし寿司、夜には握りのコースを提供しており、提供実習で学んだコース設計や段取りが役立っているそうです。
■ ベルリンの寿司店で、幅広い仕事を担当
現在、江田さんはドイツ・ベルリンの寿司店「Nichigetsu Berlin」で働いています。
同店は2026年4月に開業した寿司店で、カウンター15席の店舗です。
昼はちらし寿司、夜は握りのコースを提供しています。
江田さんは、握りだけでなく、仕込みの段取り、発注、在庫管理なども幅広く担当しています。
海外の寿司店では、一人の職人に求められる仕事の範囲が広くなることがあります。
ただ握るだけではなく、仕込み、在庫、発注、提供の流れ、お客様とのやり取りまで含めて動く必要があります。
飲食人大学で学んだ素材ごとの扱い方や特徴、衛生管理の知識は、今でも現場で役立っているといいます。
特に衛生管理は、国や店舗が変わっても欠かせない基本です。
食材を安全に扱うこと。
お客様に安心して食べてもらうこと。
その土台を学べたことは、海外で働く上でも大きな意味を持っています。
■ お客様が「受け取ろうとしてくれる」ことが嬉しい
現在の仕事で江田さんがやりがいを感じているのは、お客様に喜んでもらえることです。
特に印象的なのは、現地のお客様が日本の食文化を受け取ろうとしてくれること。
なじみの薄い食材にも挑戦してくれる。
タコのように、現地では好みが分かれる食材も試してくれる。
日本酒を勧めると、興味を持って飲んでくれる。
料理や日本酒の説明を理解しようとしてくれる。
そうした姿勢に触れるたびに、日本食を海外で提供する面白さを感じるそうです。
寿司は、ただ料理を出すだけではありません。
食材の背景、食べ方、味の組み合わせ、日本酒との相性。
伝えることで、お客様の体験は変わります。
江田さんにとって、現地のお客様がその体験を楽しもうとしてくれることが、何より嬉しい瞬間です。

■ 将来は、誰でも楽しめる自分の店を持ちたい
江田さんの今後の目標は、いつか自分の店を持つことです。
ただし、寿司だけに限定した店とは決めていません。
和食を中心としながらも、誰でも食事を楽しめる店をつくりたいと考えています。
たとえば、アレルギーへの対応。
ヴィーガンへの対応。
国籍や食習慣を問わず訪れられる店。
海外で暮らし、働く中で、食に対する価値観や制限が人によって大きく異なることを実感しているからこそ、柔軟な店づくりを考えています。
日本の考え方を大切にしながら、現地の文化や食習慣にも合わせていく。
その両方を組み合わせた店を、いつか形にしたい。
今はまず、目の前の経験を積みながら、その時に見える景色から、自分の店の形を考えていきたいと話します。
■ 入学を迷っている方へ
最後に、入学を検討している方へ、江田さんはこう話します。
「意外とどうにかなります」
シンプルな言葉ですが、調理未経験から海外の寿司店で働くようになった江田さんだからこそ、重みがあります。
迷い始めると、人はやらない理由を探してしまいます。
未経験だから。
年齢が気になるから。
周囲に反対されたから。
お金がかかるから。
時間がないから。
不安を探せば、いくらでも出てきます。
それでも、本当にやりたい気持ちがあるなら、覚悟を決めて一歩踏み出すことが必要です。
江田さん自身も、調理未経験で、片刃包丁を見たこともない状態からのスタートでした。
それでも、細かくしっかり教えてもらえる環境で学び、魚を捌けるようになり、現在はベルリンの寿司店で働いています。
■ 調理未経験からでも、海外で寿司職人を目指せる
江田さんの歩みは、海外で飲食の仕事をしたい方にとって、一つの現実的なモデルです。
サービススタッフとして働いていたものの、調理未経験でキッチンの仕事には進めなかった。
だからこそ、3ヶ月間集中して寿司を学んだ。
そして現在は、ベルリンの寿司店で、握り、仕込み、発注、在庫管理まで幅広く担当している。
海外で日本食の需要が高まる中、寿司の技術を持つことは大きな強みになります。
もちろん、3ヶ月学べばすべてが完成するわけではありません。
現場に出てからも、日々学びは続きます。
それでも、魚を捌く、寿司を握る、衛生管理を理解する、コースの流れを考えるという基礎があることで、海外で挑戦するためのスタート地点は大きく変わります。
飲食人大学では、未経験から寿司職人を目指す方、海外で日本食の仕事に挑戦したい方に向けて、オープンキャンパス、握り体験会、オンライン個別相談を実施しています。
「海外で働きたい」
「調理未経験から寿司を学びたい」
「日本食の技術を身につけて、将来の選択肢を広げたい」
そう考えている方は、まず実際の授業や学校の雰囲気を確かめてみてください。
