調理師の給料は、なぜ調べるたびに違う数字が出てくるのか
「調理師の平均年収」で検索すると、困ったことが起こります。
あるページには367万円と書いてあり、別のページには379万円、さらに別のページには359万円とあります。どれも公的な調査をもとにしていると書かれています。それなのに、数字が食い違います。
この状態で「自分はいくらもらえるのか」を判断するのは、かなり難しいことです。
数字が割れる理由は、はっきりしています。いつの調査か、どの職業分類で数えたか、月給なのか年収なのか。この3つが揃っていないだけです。
しかも、どの数字も間違いではありません。間違っていないのに食い違うところが、この話のややこしさです。
この記事では、まずどの数字がどこから来ているのかを整理します。そのうえで、勤務先によって何がどれだけ変わるのかを、公的な統計で比べます。
出どころが確かめられなかった数字は、書きません。「公表されていない」ものは、そう書きます。
結論:数字を見るときは「年度・分類・指標」の3つを確認する
調理の仕事の賃金を調べるとき、よりどころになるのは厚生労働省の賃金構造基本統計調査です。ただし、この調査を引用したページでも、次の3点が違えば数字は変わります。
| 確認する点 | なぜ変わるのか |
|---|---|
| 年度 | 毎年調査されているので、年が違えば数字も違う |
| 職業分類 | 「調理人」「飲食物調理従事者」「日本料理調理人」など、どの区分で数えたかで対象者が変わる |
| 指標 | 月のきまって支給する給与か、賞与を含む年収換算か、時給か |
ページに書いてある数字だけを比べるのは、無意味です。セットで示されていない数字は、比べる材料になりません。
この記事で使う数字は、すべて年度と分類を添えて書きます。
同じ調査を引いていても、数字は3通りに分かれる
具体的に、どこで差がつくのかを見ておきます。
年度が違う
賃金構造基本統計調査は毎年行われています。令和5年の数字と令和7年の数字は、当然違います。記事の公開日が古ければ、そこに載っている数字も古いままです。更新されずに残っているページは、よくあります。
職業分類が違う
同じ「調理の仕事」でも、統計上の区分はいくつもあります。飲食物調理従事者という広い区分もあれば、調理人という区分もあります。対象に含まれる人が違えば、平均も変わります。
給食施設で働く方を含むかどうか、パートを含むかどうか。ここが変わるだけで、数十万円の差が出ます。
指標が違う
月のきまって支給する給与だけを見ているのか、賞与を含めた年収換算なのか。時給で示しているのか。同じ人たちを数えていても、どの数字を出すかで見え方は変わります。
年収換算といっても、賞与の計算方法は資料によって異なります。ここも確認が要ります。
だから、単純に比べられない
3つのうち1つでも違えば、2つの数字を並べる意味がなくなります。ネットで見かける数字の食い違いは、ほとんどがこの3つのどれかです。どちらかが嘘をついているわけではありません。
公的な数字はこうなっている
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト(job tag)は、令和7年賃金構造基本統計調査をもとに、職業ごとの数字を公表しています。日本料理の調理人の欄には、次の値が並んでいます。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 賃金(年収) | 379.1万円 |
| 労働時間 | 169時間 |
| 平均年齢 | 44.9歳 |
| 賃金(1時間あたり・一般労働者) | 1,745円 |
| 賃金(1時間あたり・短時間労働者) | 1,221円 |
| 求人賃金(月額・令和7年度) | 29.2万円 |
| 有効求人倍率(令和7年度) | 4.22 |
補足を3つ入れます。
1つ目。この統計は、日本料理の調理人だけを取り出したものではありません。賃金構造基本統計調査には「日本料理調理人」という単独の区分がなく、飲食物調理従事者という、より広い区分で集計されています。サイト自身も「必ずしもその職業のみの統計データを表しているものではありません」と注記しています。
2つ目。労働時間の169時間は所定内の数字です。残業を含んだ総実労働時間とは別ものです。ここは後の章で詳しく見ます。
3つ目。有効求人倍率4.22は、かなり大きな数字です。求職者1人に対して4件以上の求人がある状態を指します。人手が足りていないということであり、これは働く側から見れば、選べる立場にあるということでもあります。
なぜ「調理師は給料が低い」と見えるのか
産業全体の平均を見ると、飲食の賃金は低く出ます。ここにはからくりがあります。
パートタイムで働く人の割合が、飲食は極端に高いのです。
厚生労働省の毎月勤労統計調査(令和5年分確報)によると、パートタイム労働者の比率は、全産業が約32%なのに対し、飲食サービス業等では79.06%にのぼります。
産業の平均賃金は、正社員とパートを合わせて計算されます。働く人の8割近くが短時間勤務である産業では、平均は当然下がります。
つまり「飲食業の平均賃金が低い」という事実と、「飲食業の正社員の賃金が低い」という主張は、別の話です。自分がフルタイムで働くつもりなら、見るべきは産業平均ではなく、一般労働者の数字になります。
ここを混ぜたまま「だから飲食はやめたほうがいい」と結論づけている記事は、少なくありません。数字の読み方の問題です。
労働時間で比べると、違いがはっきり出る
同じ毎月勤労統計調査(令和5年分確報)から、一般労働者の労働時間を並べます。
| 区分(一般労働者) | 総実労働時間 | 所定外労働時間 |
|---|---|---|
| 宿泊業・飲食サービス業 | 174.3時間 | 15.9時間 |
| 全産業 | 163.5時間 | 13.8時間 |
| 医療、福祉 | 156.5時間 | 7.0時間 |
宿泊・飲食の正社員は、全産業より月に約11時間長く働いています。そして医療・福祉と比べると、その差は約18時間です。
残業時間で見ると、差はもっと分かりやすくなります。宿泊・飲食が15.9時間、医療・福祉が7.0時間。倍以上の開きがあります。
この表が意味するのは、単純なことです。同じ調理の仕事でも、どこで働くかによって、1か月の過ごし方が変わる。給料の額だけを比べても、判断材料としては足りません。
時給に直すと、比べやすくなる
月給どうしを比べると、労働時間の違いが隠れます。そこで、時給に直して考える方法があります。
職業情報提供サイトが示す1時間あたりの賃金は、一般労働者で1,745円、短時間労働者で1,221円でした。一般労働者の値には残業代と賞与が含まれ、短時間労働者の値には含まれていません。比べるときは、この前提の違いに注意が必要です。
自分の場合で考えるときは、月給を実際の労働時間で割ってみてください。月給が高く見えても、残業が多ければ時給は下がります。逆に、額面が少し低くても定時で帰れる職場なら、時給は高くなります。
転職を考えるときも、この計算をしておくと比較が早くなります。同じ「手取り25万円」でも、160時間で得た25万円と、200時間で得た25万円は、別のものです。
求人票の金額を読むときに、見落としやすい3つ
統計の数字とは別に、実際に目にするのは求人票の金額です。ここにも読み方があります。
固定残業代が含まれているか
「月給28万円」と書かれていても、そのうち何時間分かの残業代が含まれていることがあります。含まれている時間数と金額は、求人票に明記する決まりになっています。小さく書かれていることが多いので、金額の欄だけでなく備考まで読んでください。
賞与の有無と実績
「賞与あり」とだけ書かれている場合、支給実績までは分かりません。年収換算の話をするときは、賞与が何か月分なのかで大きく変わります。面接の場で聞いてかまわない項目です。
まかないや寮の扱い
飲食では、まかないや寮が付くことがあります。これは金額に表れない部分です。手取りが同じでも、生活費が変わります。
逆に、制服のクリーニング代や包丁の購入が自己負担になる職場もあります。額面の比較だけでは、手元に残る額は分かりません。
勤務先によって、何が変わるのか
調理師の働き先は、街の飲食店のほかにもあります。主な行き先と、そこで変わることを並べます。
| 勤務先 | 働き方の特徴 |
|---|---|
| 飲食店・寿司店 | 夜が遅くなりやすい。土日祝は出勤日になることが多い |
| ホテル・旅館 | 朝食と夕食に山がある。早朝から動く日がある |
| 病院・介護施設 | 朝が早い。時間が決まっており、残業は比較的短い傾向 |
| 学校給食 | 朝が早く、終わりも早い。長期休みの扱いは職場による |
| 保育所 | 昼が中心。食数は比較的少ない |
| 社員食堂 | 平日中心。土日が休みになりやすい |
それぞれについて、もう少し具体的に書きます。
飲食店・寿司店は、営業時間がそのまま勤務時間に反映されます。仕込みのために早く入り、締めで遅くなる日もあります。そのかわり、包丁を握る時間は長くなります。
ホテル・旅館は、宿泊のお客様の朝食があるため、早番が発生します。宴会が入れば夜も動きます。扱う品数が多く、和洋中の幅が広がることがあります。
病院・介護施設は、食事の時間が決まっています。献立も栄養の基準に沿って組まれます。時間が読める代わりに、創作の幅は狭くなります。
学校給食は、朝が早く、午後の早い時間に終わることが多い現場です。大量調理の技術と衛生管理が身につきます。
保育所は、食数が比較的少なく、アレルギー対応など個別の配慮が求められます。
社員食堂は、平日中心で土日が休みになりやすい働き方です。
数字で裏づけられるのは、先ほどの表のとおり医療・福祉の残業が短いという点です。学校給食や保育所の個別の統計は、公表されている範囲では取れませんでした。ここは「取れなかった」とだけ書いておきます。
そのうえで、選ぶときの考え方をお伝えします。
給料の額だけで選ぶと、働き方で後悔します。逆に、働き方だけで選ぶと、技術が伸びないことがあります。
工程が細かく分かれた現場では、担当する作業が固定されます。生活は安定しますが、一通り作れるようにはなりません。街場の店は不規則ですが、仕込みから提供まで自分の手で通せます。
どちらが良いかは、5年後に何をしていたいかで決まります。
平均年齢44.9歳が意味すること
先ほどの表にあった平均年齢44.9歳は、見過ごされやすい数字です。
若い人だけの職業であれば、平均年齢はもっと下がります。40代半ばという数字は、長く続けている人がいる職業であることを示しています。
これは、体力だけで成り立つ仕事ではない、という意味でもあります。段取りの組み方、仕込みの見積もり、季節ごとの材料の扱い。経験でしか身につかない部分が、賃金に反映されていきます。
職業情報提供サイトには、経験年数別の所定内給与額のグラフも用意されています。入ったばかりの時期と、10年続けたあとでは、同じ職業でも別の数字になります。
この記事の冒頭で「平均年収」の話をしましたが、平均は一点しか示しません。自分がどの位置にいて、どこへ動けるのか。そちらのほうが、判断には役立ちます。
未経験で入った最初の1年を、どう考えるか
未経験から入る方が気にするのは、平均ではなく「最初にいくらもらえるか」です。
職業情報提供サイトが示すハローワークの求人賃金は、令和7年度で月額29.2万円でした。ただしこれは求人票に書かれた金額の平均であり、未経験者に限った数字ではありません。経験者を想定した求人も同じ母数に入っています。
では、未経験の1年目をどう見ればよいか。考え方を3つに分けます。
1年目は「学ぶ期間」と割り切る部分がある
できることが少ないうちは、任される作業も限られます。ここで額だけを見ると、どの職場も同じに見えてしまいます。見るべきは、1年後に何ができるようになっているかです。
同じ1年でも、職場によって伸び方が違う
工程が細かく分かれた現場では、担当が固定されます。安定はしますが、覚える範囲は狭くなります。逆に人数の少ない店では、否応なく幅広く関わることになります。
技術を持って入ると、1年目の中身が変わる
魚をおろせる状態で入れば、初日から任される仕事が違います。同じ1年目でも、洗い場から始める人と、仕込みを任される人では、翌年の立ち位置が変わります。
給料を上げる道は、大きく3つ
ここでは正直にお伝えします。持ち場や役職ごとの賃金を定量で示した公的資料は、見つかりませんでした。「煮方になれば何万円上がる」という数字は、公的には存在しません。
そのうえで、現場で実際に起きていることを3つに整理します。
1. 任される範囲を広げる
同じ店にいても、できることが増えれば評価は変わります。仕込みだけだった人が、魚をおろせるようになり、焼き場を任され、仕入れを見るようになる。この順番で、賃金は動いていきます。
大事なのは、待っていても順番は回ってこないことです。「やらせてください」と言った人から任されます。
具体的には、こういう順番です。洗い場と仕込み、次に焼き場や揚げ場、そして煮方、最後に板場やカウンター。店によって呼び名も順番も違いますが、任される場所が中心に近づくほど、代わりのきかない人になります。
代わりがきかなくなれば、処遇は変わります。逆に言えば、誰でもできる作業だけを続けている限り、額は止まったままです。
2. 勤務先を変える
同じ技術でも、置かれる場所で値段が変わります。客単価の高い店ほど、一人当たりの人件費に余裕があります。技術を持ってから移ると、条件の交渉ができます。
客単価が3,000円の店と、15,000円の店では、1人のお客様から生まれる粗利が違います。同じ時間働いても、店が使える原資が違うということです。
ただし、単価の高い店ほど求められる技術も上がります。移る先を選ぶには、先に技術を身につけておく必要があります。
有効求人倍率4.22という数字は、ここで効いてきます。求人が多い状況では、選ぶ側に回れます。
3. 自分で値段を決める
独立すると、価格を自分で決められます。もちろん、売上も費用も自分で背負います。
独立には、仕込みや接客のほかに、仕入れ・シフト・数字の管理がついてきます。作るだけの仕事ではなくなります。
一方で、上限がなくなるのも事実です。雇われている限り、賃金は店の原資の範囲に収まります。自分の店なら、売上から費用を引いた分が自分の取り分です。上振れも下振れも、自分で抱えます。
ここで参考になるのが、価格帯の選び方です。高級店を目指すか、手頃な価格で回転を上げるか。これは好みではなく、設計の問題です。
中価格帯という選び方

稲田亮さんは、飲食人大学の卒業生です。「寿司をもっとカジュアルに」という考えで、あえて中価格帯の寿司屋に挑戦しています。
高級店でもなく、回転寿司でもない。その間に、まだ空いている場所がある。そう見立てての選択でした。
高級店は、1組あたりの単価が高いかわりに、席数が限られます。回転寿司は単価が低いかわりに、数で回します。その間の価格帯は、どちらの強みも中途半端になりやすい場所でもあります。
だからこそ、そこで成立させるには理由が要ります。技術がなければ、単に「安くもなく高くもない店」になってしまいます。
給料の話は、雇われている間は「いくらもらえるか」です。けれども独立すれば、「いくらに設定するか」に変わります。そして、その設定を支えるのは技術です。中価格帯でも満足してもらえる握りが出せるから、その値段が成り立ちます。
公表されていない部分は、どう考えればよいか
この記事では「見つかりませんでした」と何度か書きました。持ち場ごとの賃金、免許手当の額、学校給食や保育所だけの数字。いずれも公的には示されていません。
では、判断材料がないのかというと、あります。求人票と面接の場が、その代わりになります。
- 資格手当があるか、いくらか
- 昇給の実績はどのくらいか
- 何年目でどの持ち場を任されている人がいるか
- 賞与は何か月分が実績か
これらは、聞けば答えてもらえる範囲のことです。統計にない情報は、目の前の職場に聞くのが早い。そして、聞いたときの答え方で、その職場の姿勢も見えてきます。
曖昧にしか答えない職場と、実績を具体的に出せる職場があります。金額そのものより、答え方のほうが情報かもしれません。
数字をどう読むか、もう一度整理します
ここまでの内容を、判断の順番にまとめます。
1. 産業平均は見ない。パート比率79.06%に引っ張られている
2. 一般労働者の数字で比べる。正社員として働くつもりなら、こちらが自分の話
3. 労働時間とセットで見る。宿泊・飲食は全産業より月約11時間長い
4. 勤務先で変わる部分を、先に決める。夜型か朝型か、安定か経験か
5. 年度と分類を確認する。どちらかが抜けている数字は、比べる材料にならない
この5つを踏めば、ネットの数字に振り回されずに済みます。
なお、将来の見通しについては【2030年予測】寿司職人の将来性は「二極化」する。AI時代に消える人・年収2000万稼ぐ人の決定的な差で、人手の状況については【2026年最新】国内外で爆発する寿司職人の需要!未経験から年収1000万を狙う最短ルートの真実で掘り下げています。給料そのものの内訳は【寿司職人の給料の真実】平均年収400万は嘘?「年収1000万」を稼ぐための全知識と最短ルートもあわせてご覧ください。
よくある質問
調理師の平均年収はいくらですか
厚生労働省の職業情報提供サイトは、令和7年賃金構造基本統計調査をもとに、日本料理の調理人の年収を379.1万円としています。ただしこれは飲食物調理従事者という広い区分での集計です。ページによって数字が違うのは、年度と職業分類と指標が揃っていないためです。
調理師の給料が低いと言われるのはなぜですか
産業全体の平均で見ているためです。毎月勤労統計調査によると、飲食サービス業等のパートタイム比率は79.06%で、全産業の約32%を大きく上回ります。短時間勤務の方が多い産業では、平均賃金は低く出ます。正社員として働く場合は、一般労働者の数字で比べてください。
調理師の労働時間はどのくらいですか
毎月勤労統計調査(令和5年分確報)では、宿泊業・飲食サービス業の一般労働者の総実労働時間は174.3時間、所定外労働時間は15.9時間です。全産業は163.5時間・13.8時間なので、月に約11時間長い計算になります。
病院や介護施設の調理は残業が少ないですか
同じ調査で、医療、福祉の一般労働者は総実労働時間156.5時間・所定外7.0時間です。宿泊・飲食の15.9時間と比べると、残業は半分以下です。ただしこれは産業全体の数字で、調理の担当者だけを取り出したものではありません。
調理師の求人はどのくらいありますか
職業情報提供サイトによると、日本料理の調理人の有効求人倍率は令和7年度で4.22です。求職者1人あたり4件以上の求人がある状態で、人手が足りていないことを示しています。
求人票に書かれた月給には残業代が含まれていますか
含まれている場合があります。固定残業代として何時間分・いくらが含まれるかは、求人票に明記することが求められています。金額の欄だけでなく、備考や補足まで読んでください。時間数を超えた分は、別途支払われます。
まかないや寮は給料に含まれますか
金額としては表れません。ただし食費や家賃が浮くため、手元に残る額は変わります。同じ月給でも、まかないと寮がある職場とない職場では、生活は違います。求人を比べるときは、額面だけでなくこうした条件も並べてください。
学校給食や保育所の調理師の給料は公表されていますか
勤務先の種類ごとに区分した賃金の統計は、公表されている範囲では見つかりませんでした。産業別の数字(医療、福祉など)までは取れますが、学校給食や保育所だけを取り出した数字はありません。
持ち場が上がると給料はいくら上がりますか
持ち場や役職ごとの賃金を示した公的な資料は見つかりませんでした。現場では、任される範囲が広がるにつれて処遇が変わっていきますが、金額は店や施設によって異なります。
調理師の給料は年齢とともに上がりますか
職業情報提供サイトには、経験年数別の所定内給与額のグラフが用意されています。経験を重ねるほど任される範囲が広がり、それが処遇に反映されていく構造です。ただし、上がり方は勤務先によって異なります。何年でいくらという公的な基準はありません。
40代や50代から調理の仕事を始めても給料は上がりますか
年齢による制度上の制限はありません。ただし、採用の場面では「今できること」を基準に見られやすくなります。技術を先に身につけてから入ると、最初に任される仕事が変わり、その後の伸び方も変わります。
調理師免許を持っていると給料は上がりますか
免許の有無で賃金がどう変わるかを示した公的なデータは見当たりません。ただし、採用の条件として免許を挙げている施設はあります。資格手当を設けている職場もありますが、金額は職場ごとに違います。
未経験から始めると、最初の給料はどのくらいですか
職業情報提供サイトが示すハローワークの求人賃金は、令和7年度で月額29.2万円です。これは求人票に書かれた金額の平均で、未経験者に限った数字ではありません。実際の提示額は、技術と勤務先によって変わります。
40代・50代から始める場合の考え方
平均年齢44.9歳という数字を見て、「今からでも遅くないのか」と考える方もいらっしゃると思います。
年齢による制限は、制度としては存在しません。調理師免許にも年齢の上限はありません。実際に、40代・50代から入って続けている方はいらっしゃいます。
ただし、正直にお伝えしておきたいことがあります。年齢が上がるほど、最初の職場で「何ができるか」を見られます。20代であれば、これから覚える前提で採用されます。40代であれば、今できることを基準に見られる場面が増えます。
だからこそ、先に技術を身につけてから現場に入る意味は、年齢が上がるほど大きくなります。入った日から任される仕事があれば、年齢は不利になりにくくなります。
求人倍率4.22という数字は、ここでも効いてきます。人手が足りない状況では、年齢よりも「今日から何ができるか」が見られます。
まとめ:数字より先に、働き方を決める
最後に要点を整理します。
- 平均年収が割れるのは、年度・職業分類・指標が揃っていないから
- 公的な数字では、日本料理の調理人は年収379.1万円・所定内169時間・平均年齢44.9歳(令和7年賃金構造基本統計調査・飲食物調理従事者の区分)
- 「飲食は給料が低い」は、パート比率79.06%に引っ張られた産業平均の話
- 正社員どうしで比べると、宿泊・飲食は全産業より月約11時間長い
- 有効求人倍率は4.22。人手が足りず、選べる状況にある
- 持ち場ごとの賃金など、公的な数字が無いものは無いと書きました
ひとつ付け加えます。この記事では、出どころを確かめられなかった数字を書きませんでした。そのため「はっきりしない」と感じた箇所があったと思います。
けれども、確かめていない数字をもっともらしく書くほうが、判断を誤らせます。分からないことは分からないと書いたうえで、確かめられる範囲を厚くしました。
その上で、いちばんお伝えしたいのはここです。
給料は、技術と勤務先の掛け算で決まります。技術が同じでも、置かれる場所で額が変わります。勤務先が同じでも、できることが増えれば額が変わります。
技術が上がれば、同じ店でも任される場所が変わります。任される場所が変われば、代わりのきかない人になります。そこまで来て初めて、条件の話ができます。
そして、あとから変えやすいのは勤務先のほうです。技術は積み上げるのに時間がかかりますが、求人倍率4.22の世界では、勤務先は動かせます。
飲食人大学の寿司マイスター専科では、実技60日・420時間で、40種類以上の魚を扱います。まず技術を手にしてから、どこで働くかを選ぶ。その順番なら、数字に振り回されずに済みます。
