66歳、未経験から寿司の世界へ。食で広がった人生の新しい選択肢
「この年齢から、新しいことを始めても大丈夫だろうか」
そう考えて、一歩を踏み出せずにいる方は少なくないかもしれません。
仕事や子育てがひと段落し、これからの人生をどう過ごすのか。
何か新しいことに挑戦したいけれど、何を始めればいいのか分からない。
興味はあっても、年齢や経験のなさが気になってしまう。
今回ご紹介するのは、飲食人大学 福岡校を卒業した稲富典之さんです。
稲富さんは、66歳で飲食人大学へ入学。入学前に飲食経験はありませんでした。
きっかけは、「寿司を学べば、孫や身近な人に喜んでもらえるかもしれない」という思いでした。
3ヶ月間、魚の捌き方や寿司の基礎を学び、現在は「いいね食育ネット」の代表として、福岡で子ども食堂や食育活動の立ち上げに取り組んでいます。
未経験から寿司を学ぶことが、なぜ食育活動や地域づくりにつながったのでしょうか。
そこには、年齢にとらわれず挑戦したからこそ見えた、新しい人生の選択肢がありました。
■ 66歳。これからの人生をどう過ごすか考えていた
稲富さんは、飲食人大学へ入学する以前、建築・不動産関係のコンサルティングを中心に仕事をしていました。
長く仕事を続けてきた一方で、66歳を迎えた頃、これからの人生について考えるようになります。
この先5年、10年をどう過ごすのか。
特別な趣味があったわけでもなく、何か新しいことに挑戦したいという気持ちはあるものの、具体的に何をするかは決まっていませんでした。
そんな時に目に入ったのが、寿司を学ぶ学校の広告でした。
飲食の世界は、それまで稲富さんが深く関わってきた分野ではありません。
だからこそ、直感的に「面白そう」と感じたといいます。
自分がこれまで関わってこなかった世界に飛び込めば、今までとは違う自分に出会えるかもしれない。
その感覚が、寿司を学ぶ最初のきっかけになりました。
■ 孫に、自分で握った寿司を食べさせたい
寿司を学びたいと思ったもう一つの理由は、身近な人に喜んでもらいたいという思いでした。
稲富さんのお孫さんは、寿司や刺身が好きでした。
もし自分が寿司を握れるようになれば、孫や家族に自分の手で寿司を振る舞うことができる。
それは、とても楽しいことではないか。
最初から大きな事業を考えていたわけではありません。
まずは、自分の身近な人に喜んでもらいたい。
その素朴な思いが、寿司を学ぶ大きな動機になりました。
寿司は、特別な日の食事としても喜ばれる料理です。
自分で魚を捌き、シャリを合わせ、握って提供する。
その一連の技術を身につければ、ただ料理を出すだけでなく、食べる人に体験として楽しんでもらうことができます。
稲富さんにとって、寿司を学ぶことは、人を喜ばせるための新しい手段でもありました。
■ 年齢と未経験への不安
入学前、不安がなかったわけではありません。
特に大きかったのは、年齢と未経験であることでした。
66歳で、飲食経験もない。
本当に若い人たちと一緒に授業についていけるのか。
魚を捌いたことも、寿司を握ったこともない状態から、3ヶ月間でどこまでできるようになるのか。
そうした不安は当然ありました。
実際に入学してみると、周りには飲食経験がある人や、釣りが好きで魚の扱いに慣れている人もいました。
自分よりも魚を扱うスピードが速い人を見て、最初は驚いたそうです。
ただ、そこで諦めるのではなく、稲富さんは毎日少しずつ練習を重ねていきました。
経験がないからこそ、限られた時間の中でやるしかない。
その姿勢で、3ヶ月間の授業に向き合っていきました。
■ 飲食人大学 福岡校を選んだ理由
稲富さんが飲食人大学を選んだ理由の一つは、福岡校があったことでした。
当初は東京の学校も選択肢として考えたものの、福岡で本格的に寿司を学べる環境があることを知り、入学を決めました。
自宅から通える場所で、実際に魚を捌き、寿司を握り、現場に近い形で学べる。
それは、未経験から始める稲富さんにとって大きな安心材料でした。
また、飲食人大学では、ただ寿司を握るだけではなく、魚の捌き方、仕込み、一品料理、提供実習まで学びます。
身近な人に寿司を振る舞いたいという思いから始まった稲富さんにとって、お客様に提供するところまで経験できることは大きな意味がありました。
■ 授業についていくため、毎日練習を重ねた
入学して最初に感じたのは、授業のスピードでした。
魚を扱った経験がない状態から、魚の捌き方、包丁の使い方、仕込み、握りまで、次々と学んでいきます。
最初は、思うように手が動きません。
魚の扱いも、包丁の入れ方も、周りの人と比べると遅れているように感じることがありました。
そこで稲富さんが大切にしたのが、自主練習です。
授業後も残って練習し、少しでも追いつけるように取り組みました。
最初はできなかったことも、繰り返すことで少しずつ身体が覚えていきます。
魚を捌く感覚。
包丁を入れる角度。
シャリの扱い方。
握る時の手の動き。
毎日積み重ねることで、少しずつできることが増えていきました。
■ 仲間がいたから、続けられた
稲富さんが3ヶ月間やりきれた理由の一つは、周りの仲間の存在でした。
同じように未経験から学ぶ人もいれば、飲食経験がある人もいます。
分からないことがあれば教え合い、うまくいかない時も励まし合う。
授業は決して楽なものではありませんでしたが、クラスの雰囲気はあたたかく、和気あいあいとしていたといいます。
年齢や経験が違っても、「寿司を学ぶ」という同じ目的を持って集まった仲間がいる。
それは、稲富さんにとって大きな支えになりました。
飲食人大学で得たものは、寿司の技術だけではありません。
同じ目標に向かう仲間との出会い。
年齢を超えて学び合う時間。
そして、自分にもまだ新しいことができるという実感。
それらが、卒業後の活動にもつながっていきました。

■ 家族に寿司を持ち帰る日々
在学中、稲富さんは授業で作った寿司を家に持ち帰ることがありました。
家族は最初、突然寿司を持って帰ってくることに驚いたそうです。
しかし、実際に食べてもらうと喜んでもらえました。
特に、煮穴子は評判が良かったといいます。
提供実習で学んだ穴子の仕込みをきっかけに、家でも繰り返し作るようになりました。
自分が学んだことを、すぐに身近な人へ届けられる。
そして、実際に「おいしい」と喜んでもらえる。
その経験は、稲富さんにとって大きな手応えになりました。
寿司を学ぶことは、自分のためだけではありません。
家族や友人、地域の人に食を通じて喜んでもらうことができる。
その実感が、次の活動へとつながっていきます。
■ 食を通じて、子どもたちに体験を届けたい
卒業後、稲富さんの活動は少しずつ広がっていきました。
現在は「いいね食育ネット」の代表として、福岡で子ども食堂や食育活動の立ち上げに取り組んでいます。
単に食事を提供するだけではありません。
子どもたちが実際に体験できる場をつくりたい。
たとえば、寿司を握る体験。
食材に触れる体験。
自分で作ったものを食べる体験。
そうした経験を通じて、食への関心や楽しさを感じてもらいたいと考えています。
子ども食堂というと、食事を提供する場所というイメージがあります。
しかし稲富さんが目指しているのは、食を通じて子どもたちの体験や成長を支える場です。
食べるだけではなく、作ることに関わる。
大人と一緒に体験する。
地域の人とつながる。
そのような場をつくることが、現在の大きな目標になっています。


■ 飲食人大学での出会いが、活動の土台になった
子ども食堂や食育活動を進める上でも、飲食人大学での出会いが大きな力になっています。
卒業後、先生方や関係者と話す中で、協力してくれる人が少しずつ見つかりました。
同期だけでなく、期を超えたつながりも生まれています。
食の活動は、一人だけで続けることは簡単ではありません。
場所、食材、人手、運営、資金。
さまざまな準備が必要です。
だからこそ、同じように食に関心を持つ人たちとのつながりが大切になります。
飲食人大学で寿司を学んだことが、技術だけでなく、人との縁にもつながった。
そのことが、稲富さんの現在の活動を支えています。
■ 子どもたちの目が輝く瞬間が、今のやりがい
稲富さんが現在の活動でやりがいを感じるのは、子どもたちが初めての体験に目を輝かせる瞬間です。
自分で寿司を握る。
魚や食材に触れる。
大人と一緒に料理をする。
普段なかなかできない体験を通じて、子どもたちの表情が変わる。
その姿を見ることが、何より嬉しいといいます。
食は、ただお腹を満たすだけのものではありません。
人と人をつなぐものでもあり、新しい体験の入口にもなります。
稲富さんは、寿司を学んだ経験を通じて、その可能性を実感しました。
そして今、その学びを子どもたちや地域へ届けようとしています。

■ 今後は、地域に根付くあたたかい場をつくりたい
今後の目標は、子ども食堂や食育活動を継続し、地域に根付くあたたかい場をつくることです。
一時的な活動で終わらせるのではなく、子どもたちを長く支えられる仕組みにしていく。
地域の人が関わり、卒業生や仲間が協力し、次の世代へ受け継がれていくような活動に育てていく。
そのために、NPO法人の立ち上げや、運営体制づくりにも取り組んでいます。
食を通じて、子どもたちが安心できる場所をつくる。
食を通じて、人がつながる場所をつくる。

寿司を学んだ経験は、稲富さんにとって、その活動の大切な土台になっています。
■ 入学を迷っている方へ
最後に、稲富さんは入学を検討している方へこう伝えます。
迷っているなら、まずやってみること。
年齢や経験にとらわれすぎず、一歩踏み出してみること。
新しい挑戦は、人生の選択肢を確実に広げてくれます。
稲富さん自身も、入学前は飲食未経験でした。
66歳から寿司を学び始めることに、不安がなかったわけではありません。
それでも、実際に学んでみたことで、家族に寿司を振る舞えるようになり、仲間と出会い、子ども食堂や食育活動という新しい道につながりました。
挑戦する前には想像していなかった人生が、わずか数年で広がっていったのです。
■ 年齢に関係なく、人生の選択肢は広がる
稲富さんの歩みは、年齢や経験を理由に挑戦を諦める必要はないことを教えてくれます。
もちろん、未経験から寿司を学ぶことは簡単ではありません。
毎日の練習も必要です。
できないことに向き合う時間もあります。
それでも、やろうという気持ちがあり、仲間がいれば、前に進むことができます。
66歳で寿司を学び、現在は食育活動へ。
身近な家族を喜ばせたいという思いから始まった挑戦が、地域の子どもたちへ体験を届ける活動へと広がりました。
飲食人大学では、未経験から寿司を学びたい方、人生の新しい選択肢を探している方、食を通じて人に喜んでもらいたい方に向けて、オープンキャンパス、握り体験会、オンライン個別相談を実施しています。
「今からでも何かに挑戦したい」
「寿司を学んでみたい」
「食を通じて人に喜んでもらいたい」
そう考えている方は、まず実際の授業や学校の雰囲気を確かめてみてください。

