飲食の正社員は「きつい」のか。公的統計と労働基準法で見る、理由と職場の選び方
飲食の正社員は、きつい。
そう聞いて、応募をためらっている方がいます。いま飲食で働いていて、このまま続けてよいのか迷っている方もいます。
「きつい」という声があるのは事実です。ただ、その言葉だけでは、何がどうきついのかが分かりません。
時間が長いのか。休みが少ないのか。体がつらいのか。それは、飲食のどの職場でも同じなのか。
この記事では、「きつい」と言われる理由を、公的な統計と労働基準法の条文で確かめていきます。感想ではなく、数字と制度で見ます。
そのうえで、同じ飲食でも職場によって何が変わるのか、どこを確かめて選べばよいのかをお伝えします。
結論:「きつい」には理由がある。そして、職場によって変わる
先に結論をお伝えします。
飲食の正社員が「きつい」と言われるのには、数字で確かめられる理由があります。正社員どうしで比べると、飲食の労働時間は、全産業の平均より長くなっています。入社して数年で辞める人の割合も、ほかの産業より高くなっています。
一方で、飲食のすべての職場が同じ、というわけではありません。
法律で認められている週の労働時間は、職場の規模によって違います。店長や料理長の残業代の扱いも、実態によって変わります。
つまり、「飲食の正社員」というひとくくりで考えるのではなく、「どの職場の正社員か」で考える必要があります。構造を知っておけば、きつさを減らす選び方ができます。
「きつい」と言われる4つの理由
まず、何が「きつい」と言われているのかを整理します。
1. 働く時間が長い
もっともよく挙がるのが、時間です。
飲食店は、開店前に仕込みがあり、閉店後に片付けがあります。お客様がいる時間だけが仕事ではありません。昼と夜の両方を営業する店では、1日が長くなります。
2. 人が休むときに働く
飲食店が忙しいのは、夜と、土日祝日です。世の中が休んでいる時間に働くことになります。
家族や友人と予定が合いにくい。年末年始や大型連休が、いちばん忙しい。この点を負担に感じる人は少なくありません。
3. 人の入れ替わりが多い
辞める人が多い職場では、残った人の仕事が増えます。
新しく入った人に教える。人が足りない日は、自分が長く働く。こうした負担が、正社員にかかりやすくなります。
4. 体を使う
立ち仕事です。重いものを運びます。調理場は、夏は暑く、水を使う仕事は冬に冷えます。
事務の仕事から移ってきた方は、最初の数ヶ月、体が慣れるまでに苦労することがあります。
この4つのうち、1と3は、公的な統計で確かめることができます。次の章で、数字を見ていきます。
数字で確かめる:正社員どうしで比べると、どうか
「きつい」は、感じ方です。感じ方は、人によって違います。ここでは、感じ方ではなく、数字を見ます。
労働時間:月に10時間あまり長い
厚生労働省の毎月勤労統計調査(令和5年分確報)から、一般労働者の月あたりの労働時間を並べます。一般労働者とは、パートタイム以外の働き方の人で、正社員はここに入ります。
| 産業(一般労働者) | 総実労働時間 | うち所定外 |
|---|---|---|
| 宿泊業、飲食サービス業 | 174.3時間 | 15.9時間 |
| 全産業 | 163.5時間 | 13.8時間 |
正社員どうしで比べると、宿泊業・飲食サービス業は、全産業より月に10.8時間長くなっています。1年にすると、およそ130時間です。
「飲食は時間が長い」という声は、数字の上でも確かめられます。
産業の平均は、パートの多さに引っ張られる
ここで、ひとつ注意があります。
飲食の統計を見るとき、産業全体の平均を使うと、実態を見誤ります。
同じ調査によると、パートタイム労働者の比率は、全産業が約32%なのに対し、飲食サービス業等では79.06%です。働く人の8割近くが、短い時間で働く人です。
産業全体の平均を取ると、労働時間は短く、賃金は低く出ます。正社員の実態を知りたいときは、一般労働者の数字で比べる必要があります。
離職率:辞める人の割合
次に、辞める人の割合です。
厚生労働省の令和6年雇用動向調査によると、宿泊業・飲食サービス業の離職率は、次のとおりです。
| 区分 | 離職率 |
|---|---|
| 計 | 25.1% |
| 一般労働者 | 18.1% |
| パートタイム労働者 | 29.9% |
**同じ調査で、全産業の離職率は14.2%です。宿泊業・飲食サービス業は、これを上回っています。
全体では25.1%ですが、一般労働者に限ると18.1%です。**パートタイムの29.9%とは、10ポイント以上の開きがあります。
「飲食は4人に1人が辞める」と言われることがあります。それは、パートタイムを含めた数字です。正社員に近い一般労働者で見ると、割合は下がります。
新卒は、3年以内に辞める人が多い
もうひとつ、新しく社会に出た人の数字があります。
厚生労働省が公表している、新規学卒就職者の3年以内の離職率(令和4年3月卒)です。宿泊業・飲食サービス業は、高校卒で64.7%、大学卒で55.4%でした。どちらも、産業別でもっとも高い数字です。
学校を出て飲食に就職した人の半分以上が、3年以内に辞めています。
この数字は重く受け止める必要があります。同時に、この数字が示しているのは「新卒で入った人」のことです。ほかの仕事を経験してから、自分で選んで入ってくる人の数字ではありません。
数字から分かること
整理します。
- 正社員どうしで比べると、飲食は全産業より月に10時間あまり長い
- 一般労働者の離職率は18.1%。全体の25.1%は、パートタイムを含めた数字
- 新卒で入った人は、3年以内に半分以上が辞めている
時間が長いこと、辞める人が多いことは、数字で確かめられます。「きつい」という声には、根拠があります。
では、これは飲食のどの職場でも同じなのでしょうか。次に、制度を見ます。
制度で確かめる:労働基準法は、何を定めているか
労働時間や休日は、労働基準法で決められています。飲食にも、同じ法律が当てはまります。ただし、いくつか、飲食に関わりの深い定めがあります。
原則:週40時間、1日8時間
まず、原則です。
労働基準法第32条は、労働時間を、1週間に40時間まで、1日に8時間までと定めています。
第34条は休憩を定めています。労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間です。
第35条は休日です。毎週少なくとも1回、または4週間を通じて4日以上の休日を与えることとされています。
これを超えて働かせる場合は、第36条にもとづく労使の協定、いわゆる36協定が必要です。超えた分には、割増賃金が支払われます。
特例:常時10人未満の飲食店は、週44時間
ここからが、飲食に関わる部分です。
労働基準法第40条にもとづく特例があります。常時10人未満の労働者を使用する飲食店などでは、週の労働時間が44時間まで認められています。
週40時間と、週44時間。差は、週に4時間です。
| 週の上限 | 1年あたり(52週で計算) | |
|---|---|---|
| 原則 | 40時間 | 2,080時間 |
| 特例(常時10人未満の飲食店など) | 44時間 | 2,288時間 |
1年にすると、208時間の差になります。1日8時間で割ると、26日分です。
同じ「残業なし」でも、職場の規模によって、年に26日分の差がありえます。
これは、違法でも何でもありません。法律が認めている範囲です。だからこそ、入る前に確かめておく必要があります。
店長・料理長の扱い:肩書きではなく、実態で決まる
もうひとつ、知っておいていただきたい定めがあります。
労働基準法第41条第2号は、「管理監督者」について、労働時間・休憩・休日の規定を適用しないと定めています。管理監督者にあたる人は、時間外や休日の割増賃金の対象から外れます。
飲食の正社員は、店長や料理長を任されることがあります。そのとき、「管理職だから残業代は出ない」と説明されることがあります。
しかし、店長という肩書きがつけば、管理監督者になるわけではありません。
厚生労働省は平成20年に、「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」という通達を出しています。そこでは、管理監督者にあたるかどうかは、肩書きではなく、実際の職務の内容、権限、働き方、待遇から判断する、という考え方が示されています。
採用や解雇に関わる権限があるか。自分の働く時間を、自分で決められるか。その立場にふさわしい待遇を受けているか。こうした点が見られます。
店長や料理長への昇進を打診されたときは、残業代の扱いがどう変わるのかを、必ず確かめてください。
制度から分かること
整理します。
- 原則は週40時間。常時10人未満の飲食店などは、特例で週44時間まで
- 年にすると208時間、8時間で割ると26日分の差
- 店長や料理長が管理監督者にあたるかは、肩書きではなく実態で判断される
「飲食の正社員」とひとことで言っても、働く職場の規模や、任される立場によって、時間の枠組みが変わります。
業態ごとの違いは、統計では分からない
ここで、正直にお伝えしておくことがあります。
「居酒屋はどうか」「寿司店はどうか」「カフェはどうか」。業態ごとに、労働時間や離職率を比べた公的な統計は、公表されていません。
国の統計で分かるのは、「宿泊業、飲食サービス業」という大きなくくりまでです。
インターネットには、「この業態は楽」「この業態はきつい」という情報があります。その多くは、書いた人の経験にもとづくものです。参考にはなりますが、統計で確かめられた話ではありません。
ですから、業態で決めつけるのではなく、ひとつひとつの職場の条件を、自分で確かめることが大切になります。
それでも、正社員として働く意味
ここまで、厳しい面を見てきました。一方で、正社員として働くことには、アルバイトにはない意味があります。
技術を教わる機会が多い
厚生労働省の能力開発基本調査(令和5年度)によると、計画的なOJTを実施した事業所の割合は、正社員に対しては60.6%、正社員以外に対しては23.2%でした。全産業の数字です。
計画的なOJTとは、仕事をしながら、段階を踏んで教える取り組みのことです。正社員は、そうでない人に比べて、計画的に教わる機会が多いことが分かります。
飲食でも、仕込みや調理の中心を任されるのは、多くの場合、正社員です。技術を身につけたいなら、正社員として入る意味があります。
仕事の全体を任される
アルバイトは、決められた作業を担当します。正社員は、仕入れ、原価、人の配置、売上の管理など、店を動かす仕事にも関わります。
負担は増えます。同時に、これは、将来自分の店を持つときに必要になる経験です。
年齢を重ねても続けられる
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)は、すし職人について、次のように説明しています。
> すし職人は年齢に関わらず働けるので、技術があり、やる気さえあれば一生続けられる職業である。
体を使う仕事ですが、技術が身につけば、年齢を重ねても続けられます。体力だけに頼る働き方から、技術で働く形に移っていけるかどうかが、長く続けるための分かれ目です。
人が足りていない
同じサイトによると、日本料理調理人の有効求人倍率は4.22倍です(令和7年度)。仕事を探している人1人に対して、求人が4件以上あります。
人が足りていないということは、働く側が、職場を選べるということです。条件の合わない職場に、とどまり続ける必要はありません。
きつさを減らす、職場の選び方
構造が分かったところで、実際にどう選ぶかをお伝えします。
求人票で確かめること
- 週の所定労働時間は、40時間か、44時間か
- 1日の勤務時間と、休憩の時間。中抜けの有無
- 休日は月に何日か。年間では何日か
- 固定残業代が含まれているか。含まれている場合、何時間分か
- 社会保険に加入できるか
- 昇給や賞与の決まりがあるか
特に、固定残業代は見落としやすい項目です。月給の中に、あらかじめ一定時間分の残業代が含まれている場合があります。月給の金額だけで比べず、内訳を確かめてください。
面接で聞くこと
- 正社員は何人いるか。アルバイトは何人か
- 入ってから、最初に任される仕事は何か
- 繁忙期は、どのくらいの勤務になるか
- 店長や料理長になると、給与や残業代の扱いはどう変わるか
- いま働いている正社員は、何年くらい勤めているか
最後の質問は、特に大切です。長く勤めている人がいる職場は、続けられる条件が整っている可能性が高くなります。
店を見に行く
できれば、お客として店に行ってみてください。
働いている人の表情はどうか。声のかけ合いはあるか。調理場は整っているか。忙しい時間帯の空気はどうか。
求人票には書かれていないことが、見えてきます。
自分の側の条件を決めておく
職場を見る前に、自分が何を譲れないのかを決めておいてください。
休みの日数か。時間の長さか。身につく技術か。将来の独立か。
すべてがそろう職場は、多くありません。何を優先するかが決まっていれば、選びやすくなります。
体力面が気になる方は、【50代・飲食への転職】「体力がきつい」は本当か?未経験からプロになる現実と攻略法も参考にしてください。
入ってから、自分を守るためにできること
職場を選んで入ったあとにも、できることがあります。
労働条件を、書面で受け取る
働き始めるとき、労働時間、休日、賃金などの条件は、書面などで示されることになっています。口頭の説明だけで済ませず、書面を受け取り、手元に残してください。
求人票に書かれていた条件と、実際の条件が違っていないか。ここで確かめます。
働いた時間を、自分でも記録する
出勤した時刻と、退勤した時刻を、自分でも書き留めておいてください。手帳でも、スマートフォンのメモでもかまいません。
仕込みや片付けの時間も、働いた時間です。記録があれば、給与明細と照らし合わせることができます。話し合いが必要になったときの材料にもなります。
困ったときの相談先を知っておく
労働時間や賃金について、職場で話しても解決しないときは、公的な窓口に相談できます。
各地の労働基準監督署や、都道府県の労働局に置かれている総合労働相談コーナーです。相談は無料で、働く人なら誰でも利用できます。
使う機会がないのがいちばんです。ただ、窓口があると知っているだけで、ひとりで抱え込まずに済みます。
体を守る
長く続けるには、体が資本です。
立ち仕事に合った靴を選ぶ。重いものの持ち方を覚える。休憩をきちんと取る。睡眠を削らない。当たり前のことですが、忙しい時期ほど後回しになります。
技術は、何年もかけて積み上げるものです。最初の1年で体を壊してしまっては、積み上げることができません。
いま飲食で働いていて、迷っている方へ
すでに飲食で正社員として働いていて、このまま続けるかどうか迷っている方もいると思います。
その場合は、まず、「飲食がきつい」のか、「いまの職場がきつい」のかを、分けて考えてみてください。
料理をつくること、お客様に出すことは、好きか。それが好きで、つらいのが時間や休みや人間関係であるなら、変えるべきは仕事ではなく、職場かもしれません。
人が足りていない業界です。経験のある人は、次の職場を見つけやすい状況にあります。この記事で挙げた項目を物差しにして、ほかの職場の条件を見てみてください。いまの職場を客観的に見る材料になります。
もうひとつの道は、技術を足すことです。いまの持ち場に加えて、魚を扱える、寿司を握れるという技術があれば、選べる職場の幅が広がります。
正社員とアルバイト、どちらで入るか
未経験の方から、「まずアルバイトで様子を見たほうがよいか」と尋ねられることがあります。
アルバイトで入る利点は、職場の空気を、責任の軽い立場で確かめられることです。合わなければ、離れやすい。
一方で、アルバイトのままでは、調理の中心に関わる機会は限られます。先に見たとおり、計画的に教わる機会は、正社員のほうが多くなっています。
技術を身につけることが目的なら、どこかで正社員として入る必要があります。様子を見る期間を決めておく。あるいは、先に基礎を身につけてから、正社員として入る。自分に合う順番を考えてください。
技術を持って入ると、何が変わるか
きつさを減らすもうひとつの方法は、入る前に技術を身につけておくことです。
最初に任される仕事が変わる
未経験で飲食に入ると、最初は洗い物、掃除、運ぶ仕事が中心になります。調理に関わるまでに、時間がかかります。
体はきついのに、技術は身についていない。この時期が、もっとも辞めたくなる時期です。新卒の半分以上が3年以内に辞めていることと、無関係ではないはずです。
技術を持って入ると、早い段階から調理に関わることができます。同じ時間働いても、積み上がるものが違います。
職場を選べる
技術がある人は、選べる職場が広がります。
人が足りていない業界です。魚をおろせる、握れるという技術があれば、条件のよい職場に応募しやすくなります。
待遇の交渉がしやすくなる
未経験の人と、基礎を身につけた人では、入るときの評価が変わることがあります。
何ができるかを、具体的に示せる。それが、待遇を決めるときの材料になります。
転職を考えている方は、寿司職人に転職!向いている人とは?年収や仕事内容、将来性について解説もご覧ください。これからの見通しは、【2030年予測】寿司職人の将来性は「二極化」する。AI時代に消える人・年収2000万稼ぐ人の決定的な差で扱っています。
飲食人大学でできること
飲食人大学の寿司マイスター専科は、3ヶ月(実技60日・420時間)で、寿司の技術を身につける課程です。
1クラスは最大16名。40種類以上の魚を扱います。魚をおろすところから始め、シャリを合わせ、握り、お客様の前で出すところまでを学びます。
就職先の労働条件そのものは、学校の手の届かないところにあります。飲食人大学にできるのは、入る前に技術を身につけてもらうことです。技術があれば、最初に任される仕事が変わり、選べる職場が広がります。
一度離れた飲食に、40歳で戻った人

江田憲司さんは、20代のころ、飲食の仕事をしていました。焼肉店や寿司店で働いていたそうです。
30歳を機に、一度飲食を離れます。それから40歳まで、会社員として勤めました。
結婚し、お子さんが生まれたことが、転機になりました。40歳で、もう一度飲食に戻ると決めます。
一度離れた仕事に、家族を持ってから戻る。簡単な決断ではなかったはずです。江田さん自身、年齢のこともあり、入学する前は不安ばかりだったと話しています。
寿司を選んだのは、若いころに寿司店で働いた経験があったからです。ただ、仕込みには自信がありませんでした。そこを基礎から学び直したいと考え、飲食人大学に入学しました。
入ってみると、生徒の年齢は20歳から60歳まで幅広く、40代がいちばん多かったそうです。40歳では遅いのではないか、という心配は、そこで消えました。
印象に残っているのは、1日におろす魚の量の多さです。おろして、握って、食べる。それを毎日繰り返すうちに、最初と最後で、仕上がりに大きな差が出たと話しています。
卒業後は、自分で店を探し、東京の寿司店に就職しました。面接では、熟練の職人には及ばないものの、まったくの未経験の人を一から教えるよりも、学校で基礎を学び、魚をおろした経験があるなら力になる、と言ってもらえたそうです。
同じ時期に入った未経験の方とは、給与にも差があったと、江田さんは話しています。
入ってからも、学ぶことは続いています。店独自のやり方、一品料理、その店の握り方。学校で習った基礎の上に、新しく覚えることがあります。それでも、魚を触らせてもらったとき、学校で習ったとおりにやればおろせた。これは大きな一歩だったと振り返っています。
江田さんは、これから入る人に向けて、こう話しています。未経験で店に入ると、何もさせてもらえないことが多い。いきなり店で修行するよりも、まず基礎を身につけてから入るほうがよい。
一度離れたからこそ、どう戻るかを考えた。江田さんの歩みは、飲食の正社員という働き方を、選び直した例です。
よくある質問
飲食の正社員はきついですか
労働時間は、全産業の平均より長くなっています。毎月勤労統計調査(令和5年分確報)によると、一般労働者の月あたりの総実労働時間は、宿泊業・飲食サービス業が174.3時間、全産業が163.5時間です。ただし、職場の規模や任される立場によって条件は変わるため、ひとつひとつの職場を確かめる必要があります。
飲食の正社員の離職率はどのくらいですか
令和6年雇用動向調査によると、宿泊業・飲食サービス業の離職率は、計25.1%、一般労働者18.1%、パートタイム労働者29.9%です。正社員に近い一般労働者で見ると、全体の数字より低くなります。
飲食の正社員の月収はいくらですか
職場によって大きく異なります。参考になる公的な数字として、厚生労働省の職業情報提供サイトは、日本料理調理人の求人賃金を月額29.2万円(令和7年度)と示しています。これは求人に示された賃金の平均で、実際に支払われた額ではありません。応募する職場の求人票で、内訳まで確かめてください。
飲食の正社員は楽しいですか
感じ方は人によります。お客様の反応を直接見られること、技術が目に見えて上達することにやりがいを感じる人は多くいます。一方で、時間の長さや休日の少なさを負担に感じる人もいます。自分が何を大切にしたいかで変わります。
飲食の正社員は休みが少ないですか
労働基準法では、毎週少なくとも1回、または4週間を通じて4日以上の休日を与えることとされています。それ以上の日数は、職場ごとに違います。求人票で、月の休日数と年間の休日数を確かめてください。
小さな飲食店は労働時間が長いのですか
法律上の枠が違います。常時10人未満の労働者を使用する飲食店などは、特例で週44時間まで認められています。原則の週40時間との差は、年に208時間です。すべての小さな店が44時間で運用しているわけではないので、求人票で確かめてください。
飲食店の店長になると残業代は出なくなりますか
肩書きだけでは決まりません。労働基準法の管理監督者にあたるかどうかは、実際の職務の内容、権限、働き方、待遇から判断されます。昇進の話が出たときは、残業代の扱いがどう変わるかを確かめてください。
飲食の正社員とアルバイトは何が違いますか
任される仕事の範囲が違います。正社員は、調理や接客に加えて、仕入れ、原価、人の配置など、店を動かす仕事にも関わります。能力開発基本調査(令和5年度)では、計画的なOJTの実施率は、正社員60.6%、正社員以外23.2%でした。
未経験でも飲食の正社員になれますか
なれます。人が足りておらず、未経験の方を受け入れる求人はあります。ただし、最初は洗い物や掃除が中心になりやすく、調理に関わるまでに時間がかかります。先に技術を身につけてから入る方法もあります。
40代から飲食の正社員になるのは遅いですか
遅くありません。技術があれば、年齢を重ねても続けられる仕事です。ただし、見習いの期間を長く取りにくいため、入る前に基礎を身につけておくことをおすすめします。
飲食の正社員を長く続けるには何が必要ですか
体力だけに頼らず、技術で働ける形に移っていくことです。あわせて、続けられる条件の職場を選ぶことが大切です。長く勤めている正社員がいるかどうかは、ひとつの目安になります。
業態によって働きやすさは違いますか
業態ごとに労働時間や離職率を比べた公的な統計は、公表されていません。業態で決めつけず、応募する職場の条件を自分で確かめてください。
まとめ:「飲食の正社員」ではなく、「どの職場の正社員か」で考える
要点を整理します。
- 正社員どうしで比べると、飲食の労働時間は全産業より月に10時間あまり長い(174.3時間と163.5時間)
- 離職率は、一般労働者で18.1%。全体の25.1%は、パートタイムを含めた数字
- 新卒で入った人は、高校卒で64.7%、大学卒で55.4%が3年以内に辞めている
- 労働時間の原則は週40時間。常時10人未満の飲食店などは、特例で週44時間まで。年に208時間の差
- 管理監督者にあたるかどうかは、店長・料理長という肩書きではなく、権限と待遇の実態で決まる
- 業態ごとの公的な統計はない。職場ごとに確かめる
- 正社員は、計画的に教わる機会が多い。技術があれば、年齢を重ねても続けられる
- 技術を持って入ると、最初に任される仕事と、選べる職場が変わる
飲食の正社員が「きつい」と言われるのには、理由があります。その理由は、数字と制度で確かめることができます。
そして、確かめられるということは、選べるということです。
大切なのは、「飲食はきついか」ではなく、「この職場はどうか」と問うことです。週の労働時間。休日の数。残業代の扱い。長く勤めている人がいるか。ひとつずつ確かめれば、続けられる職場は見つかります。
飲食人大学の寿司マイスター専科は、3ヶ月(実技60日・420時間)で、寿司の技術を身につける課程です。技術を持って入れば、選べる職場が広がります。資料には、授業の内容と、卒業生の進路を載せています。
