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料理が苦手なのは才能じゃない。原因は知識だけだった

「料理が苦手だから、食の仕事なんて自分には無理だ」

そう考えて、憧れをしまい込んでしまった方がいらっしゃいます。レシピどおりに作ったのに味が決まらない状態が続く。火加減が分からず焦がす。作りすぎて食べきれない。そんな経験が重なると、自分にはセンスがないのだと思えてきます。

けれども、その苦手意識の正体は、才能でも手先の器用さでもありません。

原因は、料理の裏側にある 決まりごとと数字 のほうにあります。つまり知識の問題であって、生まれ持ったものの問題ではありません。

この記事では、料理が苦手な人がどこでつまずいているのかを調査の数字で確かめたうえで、家庭の料理とプロの厨房が何によって分かれているのかをお伝えします。読み終わるころには、苦手意識が思い込みだったと分かっていただけるはずです。

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結論:プロの厨房は「適量」を数字に置き換えている

先に結論をお伝えします。

家庭のレシピには「塩を少々」「中火でいい感じに」「適量を加える」という言葉が並びます。ある程度の経験がある人は、この曖昧な指示を自分の記憶で補えます。ところが経験の浅い人にとっては、その「いい感じ」の中身が曖昧なままになります。

結果、当てずっぽうで調味料を入れることになります。薄ければ塩を足し、しょっぱくなれば水を足す。この繰り返しで味は迷子になります。

一方、プロの厨房は違います。水が何グラムに対して塩が何グラム、油の温度は何度、加熱は何分何秒。すべてが数字で決まっています。だからスケールも温度計もタイマーも常備されています。

プロが毎日同じ味を出せるのは、神がかった舌や手を持っているからではありません。料理を数字に置き換えて、その手順を守っているからです。

苦手意識を越える最初の一歩は、自分の感覚を疑って数字に従うことにあります。

料理が苦手な人は、半分以上いる

まず、いま感じている苦手意識が特別なものではないことを確かめておきましょう。

日ごろ自分で食事の支度をしている方を対象にした調査では、58.8パーセントの人が料理に苦手意識を持っていると答えています。半分以上です。

失敗の頻度も数字になっています。全体の平均は10回のうち1.8回。ところが料理歴が3年に満たない層では、10回のうち2.8回まで上がります。10回のうち3回近くは何かしら失敗している計算です。

これだけ失敗が続けば、自信を失うのは当然です。問題は、この失敗が「センスがないから」だと解釈されてしまうことにあります。

つまずいている場所は、はっきりしている

では、具体的にどこでつまずいているのでしょうか。調査の結果を並べます。

失敗の中身

順位失敗の内容
1位火加減が強すぎて焦がす
2位量を作りすぎてしまう
3位切るときや炒めるときに食材が飛び散る

苦手な作業

順位苦手な工程人数
1位献立を考えること1,293人中678人
2位食材の下準備(皮むき、下ゆでなど)435人

この2つの表を並べると、見えてくるものがあります。

上位に来ているのは、判断と段取りに関わる項目です。火の強さの見極め、出来上がる量の見積もり、そして何を作るかを決めること。いずれも判断と段取りの話です。

味付けの失敗も同じです。料理歴3年未満の人のうち、34.0パーセントが「目分量で味付けをして、おいしくなくなる」経験をしています。20代の女性でも29.0パーセントが同じ失敗を挙げています。

自分の感覚に頼って調味料を入れることが、味のバランスを崩し、「自分にはセンスがない」という誤解を生んでいるわけです。

さらに、負担を感じる場面の1位は「疲れているとき、時間がないとき」で28.6パーセントでした。段取りが決まっていないと、疲れているときに手順を思い出せません。それが料理をつらいものにしています。

プロが使っている数字を、具体的に見てみる

「数字で決まっている」と言われても、実感がわかないかもしれません。実際の数字をお見せします。

味を決める0.8パーセント

味付けの基準として、はっきりした数字があります。

人が本能的に「ちょうどいい」と感じる塩分の濃さは、0.8パーセントから0.9パーセントです。これは人の体液の塩分濃度に近い値だからだと言われています。

つまり、調理する食材の総重量をはかりで量り、その0.8パーセントにあたる塩を入れれば、誰が作っても味は決まります。感覚に頼らずに済みます。

この0.8パーセントが基準値です。これから比率がいくつか出てきますが、いずれも用途に応じて基準からずらしたものだとお考えください。

塩ではなく醤油を使いたい場合は、必要な塩の量のおよそ6倍の重さを入れます。味噌ならおよそ8倍です。

和食には「割り」という配合がある

さらに和食の現場には、比率で決まった配合があります。

  • 吸い地(お椀の汁):出汁200に対して、塩1、酒1、醤油0.5。塩分をおよそ0.5から0.6パーセントという繊細な範囲に保つための配合です
  • 煮物のベース:出汁10、醤油1、みりん1、砂糖0.5。この骨格を作ってから煮詰めて濃さを調整します
  • 肉を柔らかくする漬け液:水に対して塩3パーセント、砂糖2パーセント。塩分がこれ以上濃くなると、浸透圧で旨みが抜けてしまいます
  • ご飯のおかず:塩分1.5パーセント。ご飯と一緒に口へ入る前提なので、基準の0.8パーセントより意図して濃くします

「なんとなく」の入る余地は、ほとんど残されていません。

温度も、数字で決まっている

火加減も同じです。

寿司のシャリは人肌の36℃から40℃ が基本です。人の舌は体温に近い温度で甘みや旨みを最も強く感じるからです。冷えたご飯は硬くなり、味の感じ方が落ちます。

さらに、乗せるネタによって温度を変えます。マグロのトロのように脂の多いネタには38℃から40℃と少し温かめにします。シャリの熱が裏側から伝わって、口に入れた瞬間に脂が溶け出すからです。イカや貝のように脂の少ないネタには36℃前後にして、食感と繊細な甘みを引き立てます。

天ぷらの油も「中火でいい感じに」とは言いません。160℃から180℃と決まっています。判断の仕方まで具体的です。菜箸の先に衣をつけて落とし、いったん鍋底まで沈んですぐ浮き上がれば160℃。途中で浮き上がれば170℃から180℃。目で見て温度を言い当てる方法があるということです。

シャリの数字については、【寿司の握り方のコツ】センス不要!「15gと36℃」の法則で誰でもプロ級になれるで詳しく解説しています。

時間も、秒単位で管理される

時間の管理も、味と安全の両方に関わります。

しめ鯖の仕込みで、職人は時間を決めて酢に漬けます。塩を振って一晩置き、酢で締めるのはきっちり10分と決めている職人もいれば、塩に3時間、酢に1時間とタイマーで管理する職人もいます。流派は違っても、それぞれが明確な時間の基準を持っています。

安全に関わる数字はさらに厳密です。寄生虫であるアニサキスを死滅させるにはマイナス20℃以下で24時間以上(またはマイナス35℃以下で15時間以上)の冷凍処理が必要です。魚の中心温度は4.4℃以下に保ち、シャリの酸性度も、細菌の増殖を抑える値に保たれています。

「新鮮そうに見えるから大丈夫」という判断は、プロの厨房では、数字による確認に置き換えられています。

酢飯の配合については酢飯の黄金比|分子調理学が解き明かす「3ヶ月で寿司職人」の秘密、魚の扱いについては魚の捌き方の種類、全部覚える必要なし。プロが教える「4つの形」で9割の魚は捌けるが参考になります。

家庭のレシピが、なぜ分かりにくいのか

もう少し掘らせてください。家庭のレシピが初心者にとって難しい理由には、はっきりした構造があります。

家庭向けのレシピは、ある程度の経験がある人に向けて書かれています。「塩を少々」と書いてあっても、経験者は過去の記憶から量を補えます。「ひと煮立ち」と書いてあれば、どの状態を指すのかが目に浮かびます。

ところが経験の浅い人には、参照する記憶がありません。同じ文章を読んでも、そこから復元できるものが違うわけです。

さらに厄介なのが、失敗したときの直し方です。味が薄いと感じたら塩を足す。しょっぱくなったら水を足す。これを繰り返すと、総量が増え、味の輪郭がぼやけていきます。最初に戻れないことが、目分量の一番の弱点です。

一方、はかりで量っていれば話は変わります。食材の総重量が500グラムなら、塩は4グラム。この計算が合っていれば、味は決まります。合っていなければ、どこで間違えたかを数字でたどれます。

直せるかどうかは、記録が残っているかどうかで決まります。

苦手意識は、道具を変えるだけでも動く

いますぐできることもお伝えしておきます。

料理が苦手だと感じている方の多くが、はかりと温度計を持っていません。持っていても、お菓子作りのときだけ使っている、という方が大半です。

普段の料理に、はかりを出してみてください。

炒め物を作るなら、野菜と肉の重さを量ります。合計が400グラムだったら、塩は3.2グラムです。これだけで、味がぶれる幅がぐっと狭くなります。

温度計も同じです。揚げ物のときに油の温度を測ってみると、自分が「中火」だと思っていた温度が、実際には何度だったのかが分かります。感覚と実際のずれが見えてきます。

このずれを埋めていく作業が、そのままプロの入り口になります。才能は要りません。測る習慣を持つだけで、景色が変わります。

プロの現場では、なぜ味がぶれないのか

数字の話をもう一段だけ進めます。

プロの厨房が同じ味を出し続けられる理由は、数字を決めているからだけではありません。その数字を記録し、見返しているからです。

たとえば煮物であれば、火を入れた直後、10分後、20分後、火を止めて10分置いた後で、温度や甘み、塩分を記録します。時間が経つと味がどう変わるのかを、数字で追いかけているわけです。

先ほどのしめ鯖も同じ考え方です。塩の浸透圧で水分がどれだけ抜けるか、酢がたんぱく質にどう働くかを、時間の長さで制御しています。

この積み重ねがあるから、次に同じものを作るときに再現できます。再現できることが、プロと家庭を分けている一番大きな違いです。

そして再現は、記憶力の勝負ではありません。記録の勝負です。ここも、才能の話ではないところです。

「自分は不得意」と思っている人のほうが、上達した

ここで、勇気の出る研究をご紹介します。

和洋女子大学の研究者らが、大学の調理実習で包丁の技術がどう伸びるかを調べたものです。

長さを10センチにそろえたきゅうりを使い、学生に週1回、2ヶ月にわたって輪切りの練習をしてもらいました。合計8回です。そして20秒間で何枚切れたか、厚みはどうか、包丁の動きはどうかを、センサーまで使って測りました。

結果は、多くの人の予想と逆でした。

練習前の自己評価2ヶ月・8回の練習後
「自分は得意」と思っていたグループ枚数にも上達度にも、意味のある変化が見られなかった
「自分は不得意」と思っていたグループ枚数がはっきり増え、明確な上達が認められた

なお、この2つのグループは練習を始める前の時点で、切れる枚数に大きな差はありませんでした。得意なグループが最初から速すぎて頭打ちだった、という説明では片づきません。

「得意」と思っていた人が伸びなかった理由は、すでに自己流の動きが固まっていたからだと分析されています。自分のやり方に自信があると、教わった形を素直に取り入れにくくなります。

一方、「不得意」と思っていた人は、初めは包丁の動きが不安定で1回ごとに時間がかかっていました。それが練習を重ねるうちに大きく改善しました。

自分を不器用だと思っている人のほうが、伸びしろが大きい。これは感覚論ではなく、測って出てきた結果です。

理由は明快です。自分の感覚を過信せず、指定されたグラム数、決められた温度、秒単位の時間を、そのまま守れるからです。料理は化学反応の連続ですから、手順を正確に守れる人が、最終的に安定した仕上がりに到達します。

段取りが苦手でも、厨房では問題になりにくい

調査で「献立を考えること」が苦手の1位に来ていた話に戻ります。ここは、多くの方が心配される部分です。

家庭料理では、毎日この作業が発生します。冷蔵庫にあるものを見て、何を作るかを決めて、手順を組み立てる。しかも疲れて帰ってきた日にもやらなければなりません。負担を感じる場面の1位が「疲れているとき」だったのは、このためです。

ところが、プロの厨房では事情が違います。

作るものは、あらかじめ決まっています。仕込みの手順も決まっています。毎日ゼロから組み立てる場面が、そもそも少ないのです。

さらに、工程が体になじんでしまえば、次に何をするかを思い出す必要もなくなります。頭に空きができるぶん、目の前の魚の状態を見たり、切り方を調整したりすることに集中できます。

家庭料理で一番つらかった部分が、仕事では小さくなる。この逆転を知らないまま、家庭での経験だけで判断してしまう方が多くいらっしゃいます。

もちろん、独立して自分の店を持てば、メニューを考える場面は出てきます。ただしそれは、技術が身についた後の話です。順番として、後から来ます。

「作りすぎる」も、現場では起きにくい

失敗の2位だった「量を作りすぎてしまう」についても触れておきます。

家庭で量を見誤るのは、完成した状態を想像しにくいからです。生の野菜が炒めるとどれだけ縮むのか、乾麺がゆでるとどれだけ増えるのか。これは経験がないと分かりません。

プロの現場では、この部分も数字で管理されています。一人前が何グラムか、何人分を仕込むか、歩留まりがどれくらいかが決まっています。

寿司の場合、一貫のシャリは15グラムから20グラムです。10貫分なら150グラムから200グラム。計算できます。目分量で「これくらい」と決める場面が、ほとんど残っていません。

作りすぎる癖がある方も、量が数字で決まっている環境では、その癖が出にくくなります。

焦がすのは、火加減の問題だけではない

失敗の1位だった「火加減が強すぎて焦がす」についても、少し補足します。

強すぎる火を使ってしまう背景には、早く仕上げたいという焦りがあることが多いものです。時間がないときほど火を強くしてしまい、結果として焦がします。

プロの厨房では、時間そのものが計画に組み込まれています。何分加熱するかが決まっているので、焦って火を強くする必要がありません。段取りが決まっていることが、火加減の安定にもつながっています。

そしてもう1つ。焦がした経験がある人は、その怖さを知っています。これは現場では美点になります。生ものを扱う仕事では、慎重さが安全に直結するからです。

手が遅いことも、実は問題ではない

もう1つ、誤解を解いておきます。

「自分は動きが遅いから、厨房では通用しない」と考えている方がいらっしゃいます。ところが現場で速さを生んでいるのは、手を速く動かすこと以外の部分です。

置く場所を決めておく。取りに行く回数を減らす。迷う時間をなくす。速い職人は、手が速いのではなく動きが少ないのです。

この考え方は、【調理効率化】なぜ「手の速さ」は関係ないのか?プロが教える「動かない・迷わない」3つの技術で詳しくお伝えしています。手の速さに自信のない方ほど、読んでいただきたい内容です。

料理経験がほとんどなかった人が、3ヶ月で何を身につけたか

数字と理屈を学ぶ環境があれば、未経験からでも短い期間で現場に届きます。実例をお伝えします。

村野真和さん

村野真和さんは、飲食人大学の東京校を卒業されました。入学前は料理の経験がほとんどなく、包丁もほとんど握ったことがない状態でした。知人から「タイで寿司職人をやらないか」と誘われたことが、きっかけだったといいます。

最初につまずいたのは、魚を捌くところでした。鯵の三枚おろしに、10分近くかかっていたそうです。

それが卒業する頃には、およそ5分になりました。半分の時間です。

やったことは特別ではありません。毎日のように魚を捌き、同じ工程を繰り返しただけです。ご本人はこう振り返っています。

「急にできる瞬間が来るんです」

最初は感覚が分からない。それでも反復を続けていると、ある時点で一気につながる。この感じ方は、包丁の扱いでも味の調整でも同じように出てきます。苦手だと感じている段階は、まだつながる前というだけのことがあります。

村野さんは卒業後、渋谷の店舗で経験を積み、現在はタイのバンコクで寿司店の立ち上げに関わっていらっしゃいます。

👉 村野真和さんのインタビュー記事全文はこちら

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未経験者の集団が、ミシュランに載った

もう1つ、事実をお伝えします。

大阪にある寿司店「鮨千陽」は、飲食人大学の卒業生と在校生だけで切り盛りしている店です。この店は、ミシュランガイドのビブグルマンに5年連続で選ばれました(2019年時点)。

ここで働く職人たちは、通学前まで寿司も料理も飲食店も、すべて未経験でした。

個人の才能が集まったというより、教え方が再現できているということです。再現できるものであれば、次はあなたにも当てはまります。

家庭料理とプロの厨房は、別の競技

ここまで読んで、こう思われたかもしれません。「家で作る料理が下手なのに、プロの世界でやっていけるのか」

この不安には、はっきり答えられます。家庭料理とプロの調理は、別の競技だからです。

家庭では「冷蔵庫の余り物で適当に作る」ことが良しとされます。ところが、これはかなり高度な応用です。分量も手順も決まっていない状態から作り始めるわけですから、途中で食材が足りなくなったり、想定外の量ができたりするのは当たり前です。

一方、プロの現場は逆です。作るものが決まっていて、分量が決まっていて、手順も決まっています。応用の前に、決められたことの再現から始まります。

家庭料理でつまずいてきた方が、プロの環境に入ったとたんに力を出せるのは、このためです。求められている能力が違います。

味が分かるかどうかも、後から変えられる

「そもそも自分は味が分からない」という不安をお持ちの方もいらっしゃいます。ここにも答えがあります。

東北大学の研究グループが発表した結果があります。健康な成人40名を2つのグループに分け、片方には味を思い出す訓練を3日間続けてもらいました。使ったのはブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖という5種類の甘味です。

自分がぎりぎり感じ取れる濃さより1段階薄い甘味を味わい、どれだったかを思い出して答え合わせをする。この繰り返しを3日行いました。

結果、訓練したグループは5種類すべてで、感じ取れる濃さの限界が下がりました。3日で、薄い味を見分けられるようになったということです。

味を感じるセンサーである味蕾は、10日から14日という速さで入れ替わっています。皮膚が28日かかることを考えると、かなり速い循環です。3ヶ月あれば6回から9回、まるごと新しくなります。

濃い味に慣れていると、この感覚は鈍ります。逆に言えば、薄味に戻していくだけでも感じ方は変わります。舌も、あとから育てられます。

3ヶ月で、何をどう学ぶのか

飲食人大学の寿司マイスター専科は、修学期間が3ヶ月です。実技は60日、420時間です。月曜から土曜までの週6日、9時から16時まで手を動かし続けます。

1ヶ月目は、数字を体に入れる時期です。包丁の研ぎ方、米の種類と見分け方、酢の使い分け。アジや海老を使って、魚によって味がどう違うのかを確かめていきます。

2ヶ月目は、扱う対象が広がります。ヒラメ、カツオ、タコ、サバ、アワビ、スズキ。魚市場へ行って自分で仕入れる実習も入り、同じ数字でも魚ごとに調整が要ることが分かってきます。

3ヶ月目は実践です。市場で鮮魚を箱買いし、買ってきた魚をすべてさばきます。コースの組み立て方を学び、実際のお客様をお招きしての提供実習も行います。

期間中に扱う魚は40種類以上。定員は各クラス最大16名です。講師が一人ひとりの手元を見られる人数になっています。

指導の細かさは、ベテランの料理人が驚くほどです。およそ30年にわたって洋食屋、和食屋、カフェ、居酒屋で働いてきた方が入学された際、寿司を握るサイズがセンチ単位、米の水を切る時間が分単位、水の量が1グラム単位で決まっていることに驚いたと語っています。

基準が数字で示されている環境です。だからこそ、感覚に自信のない人でも同じ品質に届きます。

よくある質問

Q. 料理が苦手でも寿司職人の学校に入って大丈夫ですか

苦手意識の原因が知識にあるのなら、知識を入れれば解決します。実際に、包丁をほとんど握ったことのない状態から入学し、3ヶ月後には鯵の三枚おろしを5分でこなせるようになった方がいらっしゃいます。また、研究でも「自分は不得意」と考えていた人のほうが、練習によって明確に上達しています。

Q. 味覚に自信がなくても料理はうまくなりますか

味覚も訓練で変わることが分かっています。東北大学の研究では、健康な成人が味を思い出す訓練を3日間行っただけで、薄い味を見分けられるようになりました。味を感じ取るセンサーである味蕾は10日から14日で入れ替わりますので、3ヶ月あれば何度も新しくなります。

Q. 献立を考えるのが苦手でも料理はうまくなりますか

調査でも、日ごろ食事の支度をしている方の過半数が「献立を考えること」を苦手に挙げています。ただ、プロの現場では作るものがあらかじめ決まっていますので、家庭料理のように毎回ゼロから考える場面は少なくなります。家庭料理でいちばん重い部分が、仕事では軽くなるということです。

Q. 火加減が分からず料理をいつも焦がしてしまうのはなぜですか

プロの現場では温度が数字で決まっています。天ぷらの油は160℃から180℃、シャリは36℃から40℃。温度計を使い、判断の手がかりも具体的に教わりますので、勘に頼る場面が減ります。

Q. 寿司職人の学校に入る前に家で料理を練習したほうがいいですか

必須ではありません。むしろ、我流で覚えた形は後から直すほうが時間がかかります。研究でも、「自分は得意」と考えていたグループは練習しても伸びが見られませんでした。自己流の動きが固まっていたためだと分析されています。先に正しい形を教わるほうが近道になります。

もし何か始めるのであれば、技術より習慣のほうをおすすめします。はかりを使う、温度を測る、記録を残す。この3つは入学後もそのまま役に立ちます。

Q. 包丁が怖くて使えないのですが料理はできるようになりますか

飲食人大学のよくあるご質問にも「今まで包丁を握ったことがなくても授業についていけますか」という項目があります。回答は「包丁の扱い方から調理の基礎など、全くの未経験の方でも細かく丁寧に指導します」です。包丁を握ったことのない状態から入って、卒業後にミシュランの星を持つ店で働いている方もいらっしゃいます。

Q. 家族に料理が向いていないと言われましたが本当に向いていないのですか

家庭料理が上手いかどうかと、プロの調理ができるかどうかは、測っている能力が違います。家庭料理は決まっていない状態から組み立てる応用の作業で、プロの調理は決められた基準を再現する作業です。得意な人と苦手な人が入れ替わることも珍しくありません。

Q. 寿司職人の学校の学費はいくらですか

寿司マイスター専科の授業料は968,000円、入学金は0円です(税込)。実技の420時間で割ると、1時間あたりおよそ2,305円になります。

まとめ:苦手の正体は、才能ではなく知識でした

最後に振り返ります。

料理に苦手意識を持つ人は58.8パーセント。半分以上の人が同じ悩みを抱えています。そして失敗の上位に並ぶのは、火加減、量の見積もり、献立づくり。いずれも判断と段取りに関わる項目です。

プロの厨房では、「適量」がすべて数字に置き換えられています。塩分は総重量の0.8パーセント、シャリは36℃から40℃、天ぷらの油は160℃から180℃。すべてが数字です。感覚に自信がなくても、数字は守れます。

そして研究が示したとおり、「自分は不得意」と思っている人のほうが、練習ではっきり上達します。自己流が固まっていないぶん、教わった形をそのまま身につけられるからです。

料理の経験がほとんどなかった方が、3ヶ月で鯵を5分でおろせるようになり、いまは海外で寿司店の立ち上げに関わっていらっしゃいます。未経験者だけで切り盛りする店が、ミシュランガイドのビブグルマンに5年連続で選ばれています。

苦手意識という思い込みを置いて、はかりと温度計を手に取ったところから、道は開けます。

そして、ここで手に入るのは1品つくれるようになることだけではありません。原因が知識だったということは、覚えれば済むということです。分量と温度と手順は、一度わかれば別の料理にも移せます。苦手だったものが、持ち歩ける技術に変わります。

まずは資料をご覧ください。授業の流れと費用が載っています。

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