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母国バリ島初の女性寿司職人 恒吉あずささん

恒吉あずさ(つねよし・あずさ)

バリ島で江戸前寿司のケータリングを行っている恒吉あずささん。バリ島では初となる本物の味「江戸前寿司」を家族と連携をとり行っている。

≪経歴≫
前職:日本語とインドネシア語の翻訳、秘書としての語学サポート
2017年 飲食人大学 寿司マイスター専科 卒業
卒業後、3ヶ月程日本の海鮮居酒屋で勤務し、バリ島にてケータリングを始める

モノづくりに憧れて飲食の世界へ

——今までの経験を教えてください。
今までは日本語とインドネシア語の翻訳や秘書として語学サポートの仕事をしていました。飲食業界での経験はありません。

——なるほど。料理に興味を持ったきっかけは何ですか?
母親が漫画家で物語を作る仕事をしているので、何かを作る仕事には憧れていました。当時見ていたテレビ番組でパン作りの行程が描かれていたので、私も真似をしてみようと思ったのがきっかけです。

——パン作りがきっかけだったのですね。実際に作ってみてどうでしたか?
実際に作ってみると結構難しくて、こねるのが特に大変でした。テレビの行程を見ただけでは上手く作れなかったですね。最初は何度も失敗しましたが、回数を重ねると成功することが楽しくなっていきました。次第にもっと上達したいという気持ちが強くなり、職人を目指したいと思うようになりました。

母国バリ島に「本物の味」を広めるために

——なぜパン職人ではなく寿司職人を目指そうと思ったのですか?
バリ島では和食文化は広まっていましたが、寿司はそこまでニーズはなかったので、寿司を提供している店もありませんでした。だからこそ寿司を本格的に学べば、バリ島に本物の寿司を広めることができるのではないかと思ったんです。その時にバリ島初の本物の味を提供する寿司職人を目指そうと決意しました。

——なるほど!では、飲食人大学に入学しようと思ったきっかけを教えて下さい。
寿司学校を探し始めた時にたまたま見つけたYouTubeで「3ヶ月で江戸前寿司の技術が学べる学校」として飲食人大学が紹介されていました。3ヶ月という期間と江戸前寿司に特化しているのが決め手でしたね。3ヶ月なら私も頑張れる、江戸前寿司に特化して学ぶことで母国に「本物の味」を広めることができると思ったのがきっかけです。
「これだ!」と思い、すぐに入学を決意しましたね。

未経験からの寿司修行、日々の魚の捌き練習で成長を実感

——入学時に不安に感じていたことはありますか?
最初に先生が大きくて怖かったのが印象的でした(笑)
時間がたつと、先生から美味しい出汁巻のレシピも教えてもらったり親身に相談にのってもらえるようになりました。
同級生には年上が多く私が最年少だったのですが、人見知りの私にも結構声を掛けてくれたので学校生活に不安はありませんでした。

——どんな時に上達していると実感できましたか?
魚を捌いている時が1番実感湧きますね。最初は魚を捌いた時に身がボロボロでした。授業では毎日魚を捌くので、日を重ねるごとにきれいに捌けるようになっていったのが嬉しかったですね。

——家でも練習をしていたのですか?
家では握りの練習をしてましたね。練習方法を先生に教わり、ラップを何枚か巻いてネタの形にして何度も握る練習をしてました。

——沢山努力をされてきたのですね。印象的だった授業はありますか?
最後の対面授業ですね。グループに分かれて大将を決めるのですが、大将は前菜や焼き物などコース料理の内容を全て自分で決めるんですよ。握り提供の順番や扱う食材も自分で決めるので、すごく勉強になりました。対面授業では家族を招待したのですが、普段厳しい祖母が美味しいと言ってくれたのが嬉しかったです。

卒業後の現場修行に苦戦

——卒業後はすぐにバリ島に帰国されたのですか?
いえ、日本の海鮮居酒屋で3ヶ月程勤務しました。居酒屋では揚場や一品など一通りさせてもらい、最後に刺し場をさせてもらいました。実際の現場はすごく大変でしたね。

——どんなことが大変だと感じましたか?
大人数のよく予約が入っていたので、毎日営業をまわすのが大変でした。毎日仕込みの量もおおくて、想像以上に飲食店の現場は忙しかったです。

知名度をあげるため、活動開始

——バリ島に帰国してからすぐにケータリングを始めたのですか?
最初は知人の店で働きました。日本とインドネシアをミックスしたような料理を提供している店でもともと寿司はメニューにありませんでした。寿司を安く出してみないかと誘いを受けた時に寿司を知ってもらうチャンスだと思いましたね。

——お客さんの反応はどうでしたか?
結構反響があったんです。これがきっかけで名前を知ってもらえて、どんどん予約をしていただけるようになりました。お客さんの口コミで評判が広まり、出張で握る機会が増えましたね。

——なるほど。それでケータリングを個人で始めたのですね。今は1人でケータリングをしているのですか?
母と弟と3人でやってます。全て予約制にしており、年末年始は予約でいっぱいでしたね。
ケータリングで出張で握ることも多いですが、最近では自宅にお客さんを招待して寿司を提供してます。

——自宅ではどんなサービスを提供しているのですか?
庭が結構広いので、テラスに客席を作って料理の提供をしています。見晴らしの良い庭を眺めながら食事をしていただいてます。1日1組限定で行っているので、評判も良いですよ。

——コロナ禍だと1組限定であれば安心ですね。魚の仕入はどのようにしてますか?
白身魚は釣りが趣味の父親が釣ってきたものを使うので、新鮮なものを使用してます。マグロやサーモンなどは、大きな魚を提供するエージェントが定期的にバリ島に来るので、そこで購入してます。

——釣ってきた魚をすぐに仕込みできれば鮮度は保たれますね!今の仕事のやりがいを教えて下さい。
江戸前寿司に特化した店は全くないので、お祝い事や特別な日など贅沢したい時に私の寿司を選んでもらえるようになりました。特別に感じてもらえるのがとても嬉しく、もっと頑張ろうと思えるのがやりがいですね。今で2年程立っているので、自信が持てるようになってきました。最初より感動の声が増えましたね。寿司提供を始めた頃からのお客さんは今でも応援してくれてますね。

——特別な日の利用であれば、単価も高く設定しているのですか?
料理はコースで提供していて、一番高いコースが日本円で約3,800円ですね。日本では安いけどバリでは高いんですよ。日本ではこの値段で江戸前寿司は食べれないけど、バリでは食べられるというのも売りの一つですね。滞在している日本人の方もよく利用してくれます。

——お得感がありますね!海外ならではの苦労することはありますか?
やっぱり日本食なので、日本の調味料を揃えようと思うと高いですね。魚の種類も少ないので、材料集めが大変です。今までは年に1度は日本に行っていたので、その時に材料を買える範囲で買っていましたが、今はコロナで行けないので特に苦労してます。

努力次第で超える修業年数

——なるほど。飲食人大学で学んだことはどんなことが生かされてますか?
基礎、出汁の取り方、コース料理を提供する順番や盛り付け、レシピなど学校で学んだことは全て生かされてます。魚の保存方法も授業で学んだことを今でも活用してます。魚の扱いで血をきれいに洗う、えらを取るなどの注意点は素人ではなかなか分からないことを学んだので、今でも気を付けてます。

——卒業してから4年経過した今でも生かされていることが多いのは素敵ですね。恒吉さんの今後の目標は何ですか?
もともとはバリ島で自分の店を持ちたいと思ってましたが、今は現状を続けていきたいと思ってます。コロナの影響があり、店を持つには規定が結構厳しくなっていってます。今は自宅で1組限定の予約制で料理を提供していたりケータリングを行っている為、お客さんも安心してくれます。時代の流れに合っていると思います。

——時代の変化に合わせるのは大事ですね。最後に寿司職人を目指している人、海外を目標にしている人へメッセージをお願いします。
一般的には飯炊き3年握り8年と言われることが多いですが、飲食人大学では3ヶ月と期間は短いですが、基本的なことは全てこの中に詰まっています。
あとは自分の努力次第で10年以上修行した人にも近づくことができるのではないかと思います。ぜひ頑張ってほしいと思います。

——修業年数より努力が大事、心に沁みますね。ありがとうございました。

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